クルマの操作は世界共通でも、道路交通法は各国で様々なルールがあります。訪れた国で日本と同じように運転することは大変危険です。今回はフランスで運転中、ルールを知らずに危ない体験をした出来事をご紹介します。みなさんも気を付けてくださいね。
外国で運転するということ
「危ない!」助手席にいたエリックがサイドブレーキを突然引き、大きなスキール音ととも運転していたクルマは急停止。あまりに突然の出来事に何が起きたのか全く事態を飲み込めない私。びっくりした顔でエリックの顔を見上げると、彼はあきれた顔で私を見つめています。
それは長い中央分離帯がある大きな道路を直進中の出来事。前方にアクシデントがあったわけでもなく、右側には住宅街を抜ける細い道路からクルマが1台止まっているだけ。
運転も郷に入れば郷に従え
「今、君は右側のクルマに道を譲らないといけない位置にいるんだよ。」強い口調でエリックが言います。「どうして?」と尋ねると、「フランスは日本と違って右側優先なんだよ。そんなことも知らずに、フランスに来て運転しようとしたの?」
確かに、信号のない交差点では右側のクルマが優先権を持つという「右側優先の法則」は知っていたけど、コチラは明らかに大きな県道を走行中。
一方、右側のクルマが出て来ようとしている道は一方通行の細い路地。あんな細い道から出てくるクルマでも優先させるの??――しばらくすると右側のクルマは安全確認してから、右折して走り去って行きました。
知らないと危険!フランスの交通ルール
「フランスと日本はルールが全く逆だと思ったほうがいいよ。ここはフランスだからフランスのルールで走らなければいけない。見通しの良い長い直線道路を走行していても、右側に道路がある場合、右側の道路に優先権がないという看板がない限り、道路があるたびに減速して相手に道を譲らないといけないんだ。要するに前だけ見てアクセルを踏んじゃダメって言うわけ。」
「そんな重要なこと、観光パンフレットにも書いてなかったし今まで誰も教えてくれなかったわ!」
「それは残念だったね。確かにフランスは陸続きで、様々な国籍のドライバーがフランスのルールも知らずに運転しているから、外国人との事故が多いのも確かだよ。フランスでは免許の書き換えがないから、フランス人でも忘れちゃっている人はいるしね。それにいくら右側のクルマが優先でも、ノーブレーキで安全確認せずに合流するのは大変危険なこと。時々いるんだよ、安全確認せずにノーブレーキで右左折しちゃうクルマが。若い男の子に多いね。たいてい大事故が発生するよ」
右側優先の意味とは?
エリックに言われてから、日本と比べフランスでの運転は実に疲れるものだと感じていました。しかしその一方で「右側優先の法則」は、事故を未然に防いだり、渋滞緩和に大きく貢献しているものだと理解できたのです。
長い直線を走行している時、右側に道があるたびに”右側道路の標識”を確認するため(自車線側にはコチラが優先だという看板はなく、あくまでも右側の看板・道路上のラインを確認しなければいけません)、速度を上げることが出来ません。だからといって法定速度以下になると、すぐに後続車にあおられるので、法定速度は常にキープ。
そして右側からクルマが来ていないのを確認してから加速。日本ではよく、合流できず困っているクルマの後ろに長い渋滞が出来ている姿を見かけます。一方フランスではどんなに交通量の多い道路への合流であっても、左側のクルマが譲るので渋滞が発生しにくい仕組みになっています。これは、右側優先のおかげでしょうね。
最後に
日本とは優先権がまるで違うので、理解するのに最初は時間がかかりました。しかし「渋滞が発生しやすそうな場所」に応じて優先権を与えている事実を知ったとき、“さすがクルマ文化発祥の地、欧州だな”と感じずにはいられませんでした。実に合理的です。
執筆 Miki