フランス東部にあるジュラ県の「ワイン首都」とも呼ばれるアルボワ(Arbois)。ここはアルコール発酵のしくみを解き明かし、ワインの劣化防止に道を開いたルイ・パスツール(Louis Pasteur)にゆかりの深い町でもあります。
この記事では、そのジュラ地方のワインについてご紹介。科学の眼差しとジュラの山間の自然。その両方が黄金に輝くジュラの特産ワインへとつながります。
山と土壌が育てる、細長くのびるブドウ産地
ジュラのブドウ畑はスイスとの国境をなすジュラ山脈の西側に、南北約80kmにわたって細長い帯をなしています。標高はおおむね200〜400mで内陸部に位置する半大陸性気候。降水量が多く、冬の厳しい寒さが特徴です。
面積約1,950haと小さな産地ながら、石灰岩層の上に多様なマール(泥灰土)が重なる土壌と気候がこの地のワインの個性を際立たせています。
ジュラのブドウ畑は古代から続き、中世には冷たい風を避けられる南側の斜面に形成されました。交易の要所でもあった塩の産地に近く流通の後押しを受けたことも、この地方のワイン文化を支えました。
現在では、雨の多い地域にもかかわらず多くの生産者がオーガニック農法を実践していることで、注目を集めています。
ジュラワインの特徴
ジュラのワインは白が約3分の2、赤とロゼが約3分の1という比率。そのほかシャンパーニュと同じ製法による、クレマンという発泡ワインも作られています。
主要品種は、白ワインにはシャルドネにヴァン・ジョーヌを生むサヴァニャン。赤ワインにはプールサールやトゥルソーといったこの地固有の品種に加え、ピノ・ノワールが大半を占めています。
特筆すべきは「黄色のワイン」という意味をもつヴァン・ジョーヌ。樽で6年以上長期熟成し、「クラヴラン(clavelin)」という独特なボトルに詰められます。ナッツやスパイスを思わせる独自の香りが特徴的です。
また、陰干しブドウから作られる甘口のヴァン・ド・パイユ(vin de paille=藁ワインという意味)やマクヴァン(Macvin du Jura)と呼ばれる酒精強化ワイン(※1)もジュラらしさを感じる名品です。
※1:醸造過程でアルコール(酒精)を添加することでアルコール度数を高めたワイン。フォーティファイド・ワイン(fortified wine)とも呼ばれる。『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋

ジュラと地元料理のペアリング
ジュラ地方では酪農業も盛んで、チーズの生産地としても有名です。この地域の冬のごちそうといえば、ウォッシュチーズのモンドール(Mont d’Or)。温めてとろりと溶けた旨みに、酸のあるシャルドネや、ほどよい熟成感のあるスタイルが寄り添います。また、熟成したコンテチーズにはヴァン・ジョーヌが好相性。
もう一皿はタルティフレット(tartiflette)。熱々のチーズやベーコンとじゃがいもの塩気には、プールサールやピノ・ノワールといった軽めの赤ワインとの相性がよいでしょう。

ジュラのおすすめポイント
ドメーヌ・アンドレ&ミレイユ・ティソ(Domaine André & Mireille Tissot)
アルボワに試飲可能なカーヴを構える、現代の重要な造り手のひとつです。ここではオーガニック農法をさらに発展させたビオディナミ農法を導入。土壌や立地・ブドウの個性を尊重し、それぞれの畑が持つ香りや味わいの違いをありのままワインに表現しています。ドメーヌはアルボワ中心部から約3Kmのところにあり、比較的アクセスしやすいワイナリーです。
ジュラ葡萄・ワイン博物館(Musée de la Vigne et du Vin du Jura)
アルボワ中心地、13世紀に建てられたペコー城(Château Pécauld)内にある博物館です。畑仕事の道具からジュラワインの醸造方法まで、この地域のワイン文化を学べます。
パスツールの家(Maison de Louis Pasteur)
アルボワでぜひ立ち寄りたいのが、パスツールの家(Maison de Louis Pasteur)。彼が実際に暮らし、発酵研究を進めた場所で、ワインと科学が静かに結びつく空間です。
厚い石壁に守られた室内には当時の実験器具や生活の痕跡が残り、家の周囲に広がるぶどう畑とともに、ジュラが育んできた発酵文化の奥行きを肌で感じることができます。
ヴァン・ジョーヌ解禁祭(La Percée du Vin Jaune)
祭りの名前にある「Percée」は「貫通」「開口部」といった意味。6年3ヶ月間寝かせた大きな樽に穴を開け、ヴァン・ジョーヌのでき上がりを祝うお祭りです。毎年冬に行われ、開催地が年ごとに変わるのも特徴。ご当地グルメとともにできたてのヴァン・ジョーヌを樽から味わえる、ジュラならではのワインイベントです。
終わりに
ジュラのワインは、山間の小さな産地でゆっくり育ちます。アルボワでパスツールの足跡に触れ、博物館で土地の言葉を覚え、グラスの黄金色と向き合う。急がない旅ほど、この地方は深く応えてくれるはず。
執筆 Quiyo(キヨ)












