フランスという国を語るうえで欠かせない存在といえば、ワインでしょう。
ワインは単なる飲み物ではなく、角度によってさまざまな顔を見せるもの。あるときは食文化の芯をなし、あるときは地域経済を支える産業であり、またあるときは旅人が土地を味わうための入り口でもあります。
バゲットやチーズと並び、ワインはフランスの食文化を形づくる主役のひとつです。そしてその多様性と奥深さは、まさにこの国の風土の豊かさそのものを映し出しています。
地方によって異なるワインの個性
「テロワール(Terroir)」という言葉をご存じでしょうか。これはフランス語で「土地」や「風土」を意味し、ワインの原料になるブドウが育つ自然環境や、その土地の人の営みをも含んだ概念を持っています。
育てられるブドウの品種、地方ごとに異なる気候や土壌、積み重ねられてきた歴史。それらの違いこそがワインの味わいに個性を与えるのです。
また同じブドウ品種でも、育つ場所によって香りや味わいは異なります。その繊細な違いにこそ、フランス人が誇る美の感覚が息づいています。
ワインを片手に、フランスを感じよう
フランスは世界有数の観光大国です。しかしワインをテーマに旅をしてみると、よりディープなフランスが見えてきます。ワインがあるからこそ触れられる風景や文化が、そこにはあります。
この連載ではフランス各地のワイン産地を取り上げ、次のような内容をご紹介していきます。
・その土地の地理や気候、歴史
・その土地のブドウ品種とワインの特徴
・郷土料理とのペアリングや、季節ごとの食の楽しみ
・実際に訪ねてみたいワイナリーやワインに関する地域のイベント、博物館情報 など
一杯のワインを手がかりに、土地の声に耳を澄ませる旅へ! この旅が、フランスの魅力をより深く知るきっかけになれば幸いです。
執筆:Quiyo(キヨ)