フランスに住んでいて感じるのは、文化やアートが生活のすぐそばにあるということ。国が支援する芸術活動をはじめ、各自治体でもコンサートやフェスティバルが頻繁に開催されています。今回は、フランスの人々がどれだけ美術館に親しみ、また、どのように芸術や文化を楽しんでいるのかをご紹介します。
学校教育と文化 小学校から美術館見学は当たり前
フランスの学校では、子どもたちが課外授業として美術館を訪れる機会がとても多いです。美術館では学芸員によるレクチャーを受けながら、作品の鑑賞ポイントやアーティストについて学ぶことができます。
さらに、自治体が主催する文化プログラムと連携し、子どもたちが自ら作品を制作したり、絵本作家やアーティストによるワークショップに参加したりと、自分自身が表現者になる体験も重視されています。
芸術が遠い存在ではなく、身近なものとして自然と受け入れられていくフランスの教育は素晴らしいですね。美術館で学生のグループに出会うたび、小さい頃から本物の芸術に触れられる環境は本当に恵まれていると感じます。
学校の先生は無料で美術館に入れるパスがある
フランスでは、パス・エデュカスィオン ( Pass Éducation ) というものが存在しているのをご存じでしょうか? 教育省から給与が支払われている教員が申請できるもので、このパスがあるとフランス国内の160以上の国立美術館・文化財施設の常設コレクションに無料でアクセスできます。
パス・エデュカスィオンの目的の一つとして、教師に芸術の知識をつけてもらうというねらいがあります。子どもたちの学校教育における美術館選びは教師の知識や経験が欠かせません。そこで、教員たちがパス・エデュカスィオンを利用して多くの美術館を訪ね、そこで得た芸術の知識を教育現場に還元できるようになっているのです。この制度は多くの教員に利用されています。
若者が美術館を気軽に楽しめる制度がある
多くの国立美術館では、26歳以下は学生証の提示で入館無料です。特に雨の日の週末、外歩きもあまりしたくないときに美術館はうってつけです。小さい頃から美術館に親しんでいるため、お目当ての作品を何点か決めてじっくり鑑賞するスタイルも。また、友人と「どこに出かけよう?」と相談すると、当たり前のように “美術館に行く”という提案があがるのもフランスらしいところだと思います。
同じ美術館に何回も通って作品鑑賞を楽しんだり、違う美術館に行って新しい発見をしたりと、お金をかけなくてもフランスの若者はいつも芸術に触れられる環境にいます。ネットで多くの情報が手に入る時代ですが、美術館へ足を運び作品の持つオーラや空間の雰囲気を味わうことは、彼らにとって有意義な体験となるでしょう。
芸術を楽しむ大人の週末
幼いころから芸術や文化が身近にあるフランス人は、大人になっても自然とその習慣が続いていきます。週末の休みの日には演劇鑑賞やコンサート、美術館巡りや名建築を訪ねる旅行など、芸術や文化を中心とした過ごし方がごく当たり前の選択肢になっているのです。
私もフランスに住むようになってからは、展覧会やコンサートに行くなど、フランス人の友達と一緒に芸術を楽しむことが増えました。好奇心旺盛なフランス人たちは、常におもしろいイベントや展示会などがないか頻繁にチェックしており、常に芸術や文化に興じる姿勢に私も刺激を受けています。
フランスの人々にとって文化は「特別な日に楽しむもの」ではなく、人生を豊かにする日常の一部です。子どもの頃から本物の芸術に触れ、成長しても文化を楽しむ環境が整っていることが、フランスのアール・ドゥ・ヴィーヴル( art de vivre )=生きる喜びを味わう術に繋がっているのだと感じます。
まとめ
美術館で過ごすひととき、芸術に触れる瞬間は、フランス人の人生を美しく彩るかけがえのないもの。文化に親しみ、フランス生活をますます謳歌していきたいですね。
執筆 YUKO













