2025年9月16日(火)、来年度予算案を巡り首相交代となったフランスでは、社会党をはじめとする伝統左派や組合連合が、就任したばかりのルコルニュ首相(Sébastien Lecornu)に早速圧力をかけるべく、18日(木)にゼネストを呼び掛けています。
フランス9月18日、50万人規模デモ 国鉄・地下鉄・航空に影響
政府の来年度予算をめぐり、医療保険や失業保険など社会保障の改悪を含む赤字削減案に反対し、フランス最大の組合CGTを筆頭に、組合連合が共闘しストを呼び掛けています。
内務省の発表では、18日のデモ参加者は35万~50万人と予想されています。
フランス国鉄
フランス国鉄(SNCF)の主要組合は、フランス鉄道への「民間の参入による競争化を阻止」し、貨物部門の「公共輸送としての存続と発展を保証する」こと、および賃上げを要求しています。
パリシャルル・ド・ゴール空港(aéroport de Paris-Charles-de-Gaulle)行き郊外列車RERのB線も影響を受ける可能性があります。
RATP パリ地下鉄 大規模ストの予想
9月10日のストではほとんど影響のなかったパリ地下鉄ですが、18日は「運転士の組合員の80%がスト参加の意思を表明している」、と組合側は発表しています。
18日の運行状況は、本日フランス時間の夕刻に発表される予定です。
エールフランス航空、スト呼びかけも、パイロット組合はなし
エールフランス航空の組合員が多いFOやCFDTといった組合は、最大限ストへの参加を呼び掛けていますが、一方パイロットが加盟する、フランス民間航空パイロット組合(syndicats des pilotes des lignes : SNPL)は今回呼び掛けを行っていません。
管制塔のスト、10月7~9日
空の交通網に大きな影響を及ぼす管制塔のストは、10月7日に予定されており、今回のストへの参加はありません。
息詰まるフランスの公立学校制度、18日、ストで学校閉鎖も
幼稚園から高校まで公立教育機関では、ほとんどの組合がストへの参加を呼び掛けており、組合側から相当数の参加者が見込まれると発表されています。
組合側は、「一クラスの人数が多すぎ、障害をもつ子供が専用の教育を受けられないという教育の格差が生じるなど、現場では生徒も教師も閉塞感を感じている」と、公立学校が長らく抱える慢性的な制度上の問題、つまり人員不足や資金不足により「根深い構造上の危機に陥っている」と訴えています。
ルコルニュ首相、不人気な赤字削減案の撤回や見直し
ルコルニュ首相は、前任者バイル首相の来年度予算削減案のうち「年間の祝日を2日削除する」、つまり年間の労働稼働日を無給で増やす、という国民に最も不人気な案を「撤回する」と発表しました。
社会党など左派は赤字削減に際し、中間層や低所得層への負担を最小に抑えること、そして「富裕層への税負担を増やす」ことを筆頭にあげています。
現在新首相との会合には応じるものの、新内閣を緊縮財政から「方向転換」させるため、内閣不信任案をちらつかせるだけでなく、大規模なストで最大限圧力をかけるつもりです。
閣僚の「生涯特典」2026年1月から見直しを提案も、極右「うわべだけ」
国民に負担を強いるならまずは「閣僚がお手本を」と、ルコルニュ首相は歴代大統領や首相、大臣経験者が受ける、退任後の生涯にわたる恩恵の削減や見直しを発表しています。
現在17人の元大統領や首相、大臣が恩恵を受けており、年間で440万ユーロ(約7億6,400万円/1ユーロ=約173円)もの費用が税金で賄われています。
例えば、退任後10年間個人秘書費用が国の負担でまかなわれる、専用車とドライバーが一生支給される、といった内容です。
個人秘書はマクロン大統領の任期中に「生涯」から「10年」に限定されたものの、改正以前に恩恵を受けていた閣僚経験者には10年の延長が認められています。
特に負担が大きい警察の警護についてルコルニュ首相は、「警護は元首相や元内務大臣に限定し、しかも期間を限定し、リスクの見直しをして必要な場合だけ延長するといったやり方に変更すべきだ」と自らSNSの投稿で発信しています。
元大臣の特典に関して、「生涯年金がもらえる」など、根拠のないものもSNSで拡散されており、一部の国民の反感を買っています。
また、極右は早速「単なるポーズに過ぎない」と新首相の投稿を批判しています。
マクロン政権への批判や不満が高まる中、39歳のルコルニュ首相は18日、早くも反対デモの洗礼を受けることになります。
執筆:マダム・カトウ













