フランスの薬局は、ヘルスケア用品販売やお医者さんからの処方箋の薬を受け渡すだけではないのをご存じですか?もっと広い範囲でフランスの人々の健康サポートをしており、フランス生活には欠かせない場所なのです。今回は、フランスの薬局の特徴と意外なサービスを、私の体験談を交えてご紹介します。
カウンターで目にした親切な薬剤師さん
私が普段お世話になっている薬局は、長細いカウンターで5人程のスタッフの方が対応しています。ある日、私が処方箋を渡して薬剤師さんが書類を作っている間に、隣のブースでのやり取りが聞こえてきました。
客「うちの犬が、元気だったのに急に息苦しそうにしているの。何か鎮静剤はないかしら?」
薬剤師「獣医さんの所に連れて行きました?」
客「まだ行ってないの。こんなこと初めてだからびっくりしちゃって」
隣でこっそり話を聞いていた私は驚きました。私の中では、動物の病気やケガは専門機関へ行くのが当たり前と考えていたので、薬局で犬の健康相談をしても……という思いがありました。すると薬剤師さんは、「痛みを和らげる薬はあっても痛みを取り除く鎮静剤はないんですよね」と言いながら落ち着いて対応。
もちろん薬剤師さんは動物の健康・薬のことは専門外です。でもフランスの薬局は動物のノミやダニ対策の首輪なども売っており、獣医さんの処方箋があれば獣医薬を出すことも可能です。なので、つい薬剤師さんに犬の健康相談をしたくなるお客さんも少なくはないのかもしれません。
私は先に薬局を出てしまい残念ながらこのやり取りを最後まで見届けることができませんでしたが、専門外のことでもお客さんの不安をきちんと傾聴する薬剤師さんの接客態度は評価したいなと感じました。
キノコの鑑別サービスがあるフランスの薬局
食欲の秋、フランス人はキノコ狩りを楽しみます。私も同行した経験がありますが、皆さん自分のお気に入りの山でたくさんのキノコを収穫していました。キノコの図鑑を持っている人も多く、家に帰って図鑑を参照しながらキノコが食用に適しているか調べます。
なんと、フランスの薬局はキノコの鑑別 ( identification des champignons ) のサービスがあるのです!薬剤師さんは大学で、有毒種を含むキノコの識別と中毒予防の為の知識を菌類学の授業で100時間ほど学ぶそうです。
自分が収穫したキノコが食べられるのか?毒があるのか?の判断や、中毒リスクを避けるためのアドバイスを薬局で受けることができるなんておもしろいですよね。
予防接種も受けられる!薬局は身近な健康アドバイザー
フランスで病院受診する場合、基本的に救急以外はホームドクターにアポを取ってから行く流れになります。なので、受診にたどり着くまでに時間がかかってしまうため、フランス生活を始めたころは「今、痛いのにどうすれば?」という思いをよくしていました。
一方、薬局は虫刺されや急な体の痛みなどの相談に乗りながら薬をすすめてくれるので、応急処置にはとてもありがたい存在です。また、栄養アドバイスをしてくれる場合もあり、予防接種の注射を受けることも可能です。
フランスでは、研修を受けた薬剤師さんはワクチン接種など一定の医療行為が行えるようになっており、予約も不要。ワクチンは各自が薬局で入手するシステムですので、その場ですぐに注射をお願いできます。
フランスの薬局では赤ちゃん連れの家族からお年寄りまで、幅広い年齢層のお客さんを見かけることから、普段の健康管理の大事なサポーターの役割を担っているのだなと実感しています。
まとめ
薬やサプリの販売にとどまらず、動物の体調相談やキノコの鑑別などフランスの薬剤師さんの仕事は幅広いですね。薬局によっては、薬局名が入ったカレンダーなどのノベルティを1年に1回顧客にプレゼントしています。フランス人のお家に遊びに行くと、薬局限定ノベルティを頻繁に見かけるので多くの人が薬局にお世話になっているのだなと実感します。もしもフランス旅行中に体調のトラブルやケガをしたときは、気軽に薬局に立ち寄って相談してみてくださいね。
執筆 YUKO