2024年4月16日(火)、13日(土)シドニーの商業施設で男が刃物で6人を刺殺、十数人が負傷した事件で、その場に居合わせたフランス人男性ダミアン・ゲロー(Damien Guérot)さんは、鉄ポールを手に犯人の行く手を阻み、その映像がニュースやSNSで世界中に拡散されました。その勇敢な行為に感謝の意を込め、アンソニー・アルバニージー(Anthony Albanese)豪首相は、同氏にオーストラリア国籍を付与すると発表しました。
「鉄ポールの男」のビザ、残りあと1か月、国籍付与に署名運動
商業施設の刺殺事件の映像が公表された直後、エスカレーターでナイフを持った男の行く手を鉄ポールで阻む男性がフランス人のゲローさんだということが判明しました。
建設関係の仕事でオーストラリアに滞在している同氏ですが、豪メディアのインタビューで彼のビザがあと1か月で切れることがわかると、事件の翌日市民の間で署名運動が起こりました。
署名運動の発起人、ベリンダ・ロビンソン(Belinda Robinson)さんは、ボンディ・ウエストフィールドで(Bondi Westfield:事件現場の商業施設の名前)ダミアン・ゲローさんは自分の命をも顧みず、無差別殺人犯に立ち向かった」ことに敬意を表し署名運動を開始したとコメントしています。
事件の映像を見ると、エスカレーターで上層階に移動しようとしている犯人に対峙し、鉄ポールで行く手を阻止するゲローさんの姿が見られます。
署名運動はネット上でオーストラリア政府に対し行われ、その趣旨は「彼の英雄的行為のおかげで(さらなる殺傷が阻止され)どれだけの人の命が救われたかわかりません。彼のオーストラリア滞在許可があと1か月で切れるため、我々は政府にたいし、ゲロー氏の勇敢な行動に感謝の意をこめオーストラリア国籍の付与を要求します」と記載されています。
謙虚な2人のヒーロー
ゲローさんは、この日会社の同僚で友人のシラス・デスプロー(Silas Despreaux)さんと施設内のフィットネスクラブに来ていました。館内の騒ぎに気付いた彼らは犯人を見つけると、その場にあったものを手に犯人を捕まえようと追いかけますが、最終的には近くに居合わせた女性警官が犯人を射殺します。同警官は、「彼らの協力のおかげ」とコメントしています。
インタビューに答えた二人は「とにかくナイフを持った人殺しを捕まえようと考えずに行動した。こういう状況だとアドレナリンが出るからね」と当時の状況を説明しました。また、「本当のヒーローは女性警官です」とコメントしました。
メディアでデスプローさんは永住権を持っているものの、ゲローさんはあと1か月でビザが切れると報道されています。
映像は英語(”bollard”は英語で鉄ポールの意)
「オーストラリアにいつまでもいてください」、豪首相
アルバニー首相は、「困難な時ほど人間の素性が現れるというが、わが国民ですらないゲロー氏が行った勇敢な行為は称賛に値します。フランスにとっては(素晴らしい人を失い)残念なことになるが、こういう人は我が国に大歓迎です」とオーストラリア国籍付与を発表しました。
マクロン大統領も、犠牲者と家族にお悔やみを述べるとともに、「模範的フランス国民」とXでコメントしています。
執筆:マダム・カトウ