2024年3月15日(金)、フランスの児童の算数の著しい成績低下に歯止めをかけようと、アタル首相(Gabriel Attal)は政府のキャンペーンにミス・フランス2024、エーヴ・ジル(Ève Gilles)を起用しました。「理数系は男子」、という固定観念が根強くのこっており、キャンペーンを通じて女子にもっと数学に興味を持ってもらい「リケジョ」の育成に力をいれる目論見です。
女子児童、小学校から徐々に算数の成績低下
フランス政策研究所(Institut des Politiques Publiques : IPP)が発表した調査結果によると、小学校1年(CP : cours préparatoire)に入学したての時点では、男子児童と女子児童の算数の能力に差はないにもかかわらず、半年もたつと女子児童の算数の成績は徐々に落ち始めることが明らかになっています。
そして2年生(CE1 : cours élémentaire 1re année)になるとさらに落ち、男子児童との差が拡大し始めます。
「この傾向は児童の親の社会的ステータスや経済力、私立と公立などの形態や学校の良し悪しとも関係なく、フランスのどの地域でも同じように表れています」と、この調査に参加した経済学者トマ・ブレダ(Thomas Breda)氏は述べています。
調査は250万人の児童に2018年から2022年の間に行われた標準学力テストの結果に基づいています。
テストは小学校入学時と半年後、さらに2年生に上がった直後に行われ、簡単なフランス語の読み書き、足し算や数の比較、数量に関する初歩的な能力を測るものです。
テストの結果により、各児童をランク分けし、半年後、1年後のランクの変化をみます。
これによると、当初成績がトップクラスのランクにいた女子児童のほうが、その後算数の成績を大幅に下げる傾向が強いことがわかっています。
唯一例外として、学力強化校に指定された学校の小グループクラスにおいてはこの傾向がないことが明らかになっています。
ちなみに、入学当初、女子児童は男子児童に国語能力で大きく差をつけていますが、その差は徐々に縮まっていきます。
世界数学の日に「女の子だから数学は無理」と誰にも言わせないで、ミス・フランス
3月14日「世界数学の日」、アタル首相がミス・フランスとタッグチームを組んだ(?)かのように、両名のInstagramに2人のビデオが投稿されました。
その中でアタル首相は、フランスの児童の数学力低下は、男女関係なく深刻な問題になっており、政府の優先課題となっていると発表しました。
首相はまた女子生徒たちに向け、数学は「女子の分野じゃない」と自ら避ける傾向にある現状から、「特に女子の数学力向上に最大限力を入れていく」と発言し、この「リケジョ・キャンペーン」のアンバサダーに最もふさわしい人としてミス・フランスを紹介します。
ミス・フランスは、「自分は数学科の2年生だけど、クラスには女子生徒がまだまだ少ないので、女子にもぜひ数学を学んでほしい」、また、数学を勉強すると科学者、宇宙研究者、調査など様々な職業に門戸が開かれるといったメリットを説明しています。
さらに世間の目や「数学=男子」という社会的先入観に惑わされて「私にはできない」と思い込んだり、「女の子には無理」と言う人のことを聞かないように呼びかけました。
理系大学卒、女子は3分の一
理系文系の得意不得意に関して、生物学的になんの根拠も証明されていないなか、いつの間にか女子は数学が苦手という意識が先行しているようです。
先述の調査をしたブレダ氏は、男の子が「小さい時からビーズ玉遊びやサッカーなど数に関係ある遊び」をすることなども関係があるのではとコメントしています。
ちなみに2021年時点でフランスの理系大学、および大学院卒業資格者のうち女子が占める割合は3分の1ほどです。
執筆:マダム・カトウ