フランス政府認定の試験であるDELF(Diplôme dʼétudes en langue française)B1は、日常生活に支障のないレベルのフランス語力があるかを確かめるのによい指標となります。
このシリーズ記事では、DELF B1試験の内容や対策をご紹介しています。第5回目の今回はDELF B1試験の筆記のうち作文問題を徹底的に分析します。
(シリーズ第1回では、DELF B1試験の基本情報を、第2回では過去問と参考書の探し方を、第3回はリスニングの内容と対策を、第4回は読解の内容と対策を紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。)
作文試験の内容
第1回の記事で見たように、筆記試験はリスニング(Compréhension de l’oral)・読解(Compréhension des écrits)・作文(Production écrite)の3セクションで構成されています。
作文試験では、45分で160語以上の文章を作成します。
以下では、France Education InternationalのHP上にある過去問 DELF tout public – niveau B1を分析しながら、DELF B1試験の特徴を見ていきます。
作文の形式とテーマ
過去問では、フランス人の友人からの海外赴任の相談メールについて返信を書くという問題が出されました。
以上から、自分の考えや経験を書く力が問われているとわかります。
書くべき要素をつかむ
問題文を丁寧に読むと、単にメールへの返信文を書けばよいのではなく「具体例を挙げつつ(en lui donnant des exemples d’expériences diverses)」、友人へ「意見を述べる(Vous lui donnez votre opinion)」ことが必要です。
つまり書くべき要素は友人の海外赴任についての意見と、海外赴任やキャリアにかんする経験の2つあります。
どんなに素敵で感動的な返信を考えついても、必要な要素がそろっていなければ問題に答えたことにはなりません。問題文をしっかり読みましょう。
人称・時制・態に注意!
人称にtuを使うかvousを使うか、問題文から読み手の性質や状況を読み取って判断する必要があります。今回の過去問では、tuの人称を用いて作文します。
時制については、問題文をよく見ると友人の海外赴任は「未来」の出来事ですが、自分の経験は「過去」の出来事です。もう少し詳しくいうと、友人への意見は未来のいずれかの時制(または現在)で、具体例は過去のいずれかの時制で書く必要があります。
要素ごとに時制を判断し、うまく組み合わせて一つのテキストを仕上げることが大切です。
また態については、友人へのアドバイスはもしかすると主観的な要素を含むかもしれません。一方、自分の経験はすでに起きた事実です。
よって直接法ばかりではなく接続法(subjonctif)を使うこと、具体的にはil faut que…やJe pe pense pas que…などの表現を使うことも視野にいれておくと、文法力をアピールすることができるでしょう。
作文の対策その1:解答の分析
作文試験はアウトプットの能力を測るものですが、試験勉強の段階ではインプットも重要です。
自分でできる対策のひとつは解答の分析です。過去問や参考書をひとまず問いたあと、模範解答の内容や文法事項を分析します。
この目的は自由作文の形式と構成、また書くべき内容を具体的につかむことです。
DELFの作文は和文仏訳とは異なり、書くべき内容から自分で考える必要があります。それも、フランス語圏の文化にある思考回路でロジックを組み立てることも求められています。
模範解答の文章を読み、どの部分が「書くべき要素」にあたり、時制・態をどのように選択して書いてあるかを分析してみましょう。テーマや内容は異なっても、同じように文章を構成するヒントになるはずです。
作文の対策その2:添削してもらう
添削は、自分で書いた文章を他の人に見てもらう作業です。
前述した「書くべき要素」が入っていて模範解答と同じ形式・内容で書いたつもりでも、読み手に伝わっていなければ意味がありません。
そこで、自分で書いた文章のつづり・文法(時制、性数、態など)・構成などを客観的にチェックしてもらうことが有効です。
近くにいる先生やフランス語を使う友人に頼むのがベストでしょう。
自分でも、もう一歩
さまざまな事情で先生や友人をつかまえられない時もあると思います。
そのような場合には少し時間をおいて(書いたことを忘れた頃に…)、自分でベストの解答をつくってみるのも良い練習になります。
B1試験に限りませんが、私の場合は時間制限つきで作文 →辞書や文法書(+パソコンの場合は、校正ツール)をつかって自分の文章を修正 →可能なら先生などに頼む、という手順を取ることが多いです。
試験対策の時は修正した自分の文章を完成形として、時間制限つきで同じクオリティの作文を再現できるように繰り返し練習するのがおすすめです。
まとめとアドバイス
この記事ではDELF B1試験の作文問題を分析し、おすすめの対策をご紹介しました。
まず問題文から「書くべき要素」をしっかり特定すること、その要素から時制・態・人称を判断することが大切です。
DELFの作文は形式や構造の自由度が比較的高いので(160語以上という指定のみですね)、「何を書けばいいのやら…」という方は模範解答を分析してみることをおすすめします。
各要素が具体的に想像できるようになったら、自分で作文してみましょう。添削は先生や友人に頼むもよし、自分で行うこともできます。
レッスンでは一から添削を頼む方が多いと思いますが、自分で修正したバージョンを見てもらうのもおすすめです。
次回の記事では、口頭試験の内容と対策についてご紹介します。お楽しみに!
執筆あお