12月23日(金)、クリスマスを今週末に控えフランスでは帰省ラッシュが続いています。明日24日の夜は、家族や親戚と集まってクリスマスディナーを食べ、多くの家で、子供にプレゼントを買うだけでなく、大人同士もプレゼント交換を行います。毎年大変な出費がかさむこの習慣ですが、インフレが続く中、相手に必要かどうかもわからないものを購入する消費社会は「環境に悪い」と疑問を持つ人が増えているようです。果たしてプレゼント交換の習慣を辞めることができるでしょうか?
クリスマスのプレゼント交換は悪習か?
フランスの多くの家庭では、毎年クリスマスプレゼントは子供だけでなく、大人たちもお互いに交換し、兄弟や姉妹のほか、その奥さんやご主人などのパートナー、姪や甥、おじいちゃんおばあちゃんなど多くの人への贈り物を用意します。
消費のための消費、クリスマス後はフリマが大盛況
かつて24日の閉店前に店に駆け込んで「なんでもいいから」と買い物していた人は、Eコマースの出現で激減していますが、今度は注文した商品が期日までに届くかどうか気をもむことになります。
以前、クリスマス前には多くの商品が「最も高い値段」で販売されていましたが、今ではブラックフライデーで購入でき、中には1年前のソルドで購入しておく「堅い」消費者もいます。
ところが、いざプレゼント交換してみると、サラミカッターを2つもらったり、「禅な生活の送り方」という本を2冊もらったり、使い道がないものや気に入らない色の服など、クリスマス休暇が終わると不要なものが一斉にフリマサイトに出品されます。
インフレと温暖化で「プレゼント交換」に疑問
2022年、この1年間のインフレでフランス人の購買力が落ち、さらに今年、観測史上最も暑かった年として記録を塗り替えるほどの温暖化で、クリスマスプレゼントに象徴される消費社会に対し、「環境に悪いからやめるべきでは」との声も上がっています。
プレゼント交換、社会的つながりの維持に不可欠
社会学者ソフィー・デュビュイッソン=ケリエール(Sophie Dubuisson-Quellier)氏は、プレゼント交換の習慣は「商業的な理由で作られた訳ではなく、人間社会にとって大変重要なこと」と明言します。
氏によると、プレゼントは個人が社会生活を送る上で、相手との良い関係を築き、維持するために必要不可欠な行為であり、それにより関係を強固なものにしたり、連帯感をもたらしたり、上下関係を明確にしたりします。
プレゼント交換に「参加しない」ということは、社会の中でのけ者にされ孤立してしまうことを意味します。
「何も贈らない」は禁物
クリスマスパーティに手ぶらで現れたら、仮に皆に白い目で見られなかったとしても、「宇宙人」扱いされるのがオチでしょう。
「僕自身がプレゼント」と言うようなおちゃらけは、バレンタインデーならともかく、マイケル・ブブレ(Michael Bublé)並みのルックスでピアノに座り、おもむろに「Let it Snow」を歌えるぐらいの才能がないと、誰にも相手にされないでしょう。
確かにクリスマスは「年に1回、家族や親戚と集まり、美味しい料理を一緒に食べながらともに楽しい時を過ごす」ための日だと認識されています。
人類学者ファニー・パリーズ(Fanny Parise)氏は、クリスマスは我々の生活習慣を反映する「半分商業的、半分セレモニー的」な行事だと言います。
ただ、その商業的な部分があまりにも大きくなってしまったため「一種の宗教のように私たちの生活の一部になってしまっている」と説明しています。
「現金」はなぜダメなのか?
膨大なクリスマスプレゼント消費の無駄を省くには、誰もが欲しがり役に立つもの、つまり「現金をプレゼントすればいい」と、アメリカの経済学者ジョエルワルドフォーゲル(Joel Waldfogel)は2015年に提唱しました。
これについて経済学教授フランソワ・レヴェック(François Lévêque)氏は、この考え方は「馬鹿げて」おり「機能しない」と述べています。
プレゼントには、選ぶときに「渡す相手に注意を払う」「相手のためになる」ことを考えたり、「サプライズ」といったお金には変えられない「贈る人の思い」が含まれているのです。
人類学者のパリーズ氏も「おじいちゃん、おばあちゃん、両親が子供に、つまり次の世代にお金をあげて好きなことに使いなさい」というのはありですが、立場や経済状況が同じような人たち、つまり兄弟間で「50ユーロ(約7000円/1ユーロ=約140.80円)あげるから50ユーロちょうだい」と言ってもプラスマイナスゼロになって「プレゼント」は成立しません。
無駄を省くなら、ウケを狙った不用品をやめる
結論から言うと、プレゼントをしないと言う選択肢は今のところありません。
環境のために無駄な消費を減らしたければ、受けを狙っただけのくだらないものをやめることです。手作りには時間と才能も必要になりますが、中古なら地球にもお財布にも優しいプレゼントになるでしょう。
ただし、子供に中古品のプレゼントをして学校でバカにされるといった弊害があることもあります。
無駄を省きたい人の間で「シークレット・サンタ(注)」が流行っていますし、手作りのもの、中古のものをプレゼントするのも一つの手です。
クリスマスプレゼントの習慣、集団生活が機能するために不可欠
クリスマスプレゼントの習慣が変えられないのは、あの手この手で売ろうとする「企業のワナ」とよく言われますが、実はこの習慣が集団生活がうまく機能するために根付いているものであるからこそ、それを一方的に変えることは不可能なのです。
なのでこの習慣を変えたければ、より小さい集団である家族や友人の間でやり方を変えることです。
一人の相手に対しプレゼントをバラバラに買わずに数人で一緒に買う、「このブランドは好きじゃない」と伝えるなどできることはあるでしょう。
注)友人や家族などのグループ間で、まずクジ引きをし、引いた名前の相手のプレゼントを買い、当日受け取った人はプレゼントの贈り主を当てると言うプレゼント交換の仕組み。この仕組みのアプリが欧米で流行っています。
執筆:マダム・カトウ