7月5日(火)、マクロン大統領は、先月の国民議会(下院)選挙後初の内閣改造を行いました。国民議会選で与党連合が過半数割れとなったものの、野党との連立も成立せず、そのため与党連合からのみの人選となり野党からの入閣はありません。主要ポストである経済相が留任するなどこれまでの改革路線を維持しています。
マクロン氏、内閣改造も現状路線を維持
マクロン大統領は、6月の国民議会選で過半数を失ったことから野党各党との連立を模索していましたが、野党側が「いかなる形でも政権合意も拒否」したと発表しました。
今後、政策の議決にはその都度野党との交渉が必要になります。
一方、続投が決まっているボルヌ首相の内閣改造を行いましたが、斬新さはなく、連立の可能性がないことから野党からの人選はありませんでした。
インフレ対策を優先し、コロナ禍後の経済回復で実績をあげたル・メール(Bruno Le Maire)経済相を留任、また内務相のダルマナン(Gérald Darmanin)氏も続投となっています。
政府報道官にヴェラン元保健相
マクロン大統領はコロナ禍で保健相として感染対策を指揮したオリヴィエ・ヴェラン(Olivier Véran)氏を、政府報道官に起用しています。
ヴェラン氏は、大統領選後5月に発足したボルヌ内閣で議会調整担当官に任命されていましたが、今後インフレ対策など政府の施策を国民に発信する役を担います。
保健相に民間から救急医のブロン氏、コロナ対策、病院改革の重責
コロナ第7波で感染再拡大が続くフランスですが、保健相にはフランソワ・ブラン(François Braun)(59歳)氏が民間から起用されました。
ブロン氏は、メス=ティオンヴィール(Metz-Thionville)地方救急センター長で、救急医療組合の書記長でもあります。
フランスの病院では長年にわたり人手不足が問題になっていますが、解消しないままコロナ禍で疲弊した看護師らの退職に拍車がかかっています。低賃金で長時間労働の解消、病院の負担解消など課題は山積みです。
ボルヌ内閣でヴェラン氏の後任に起用されていたブリジット・ブルギニョン(Brigitte Bourguignon)氏は下院選で敗退しています。
「環境にうとい?」環境相、ベシュ氏の起用に疑問
与党連合の一つ、フィリップ(Edouard Philippe)元首相率いるオリゾン党(Horizon!)で同氏の右腕と言われ、現アンジェ(Angers)市長を勤めるクリストフ・ベシュ(Christophe Béchu)氏が環境移行相に起用されました。
この人選について、早速ヨーロッパ・エコロジー=緑の党(Europe Écologie – Les Verts)から批判の声が上がっています。
エコロジー党のサンドリーヌ・ルソー(Sandrine Rousseau)氏は「環境問題の活動において、ベシュ氏の名前を聞いたことがない」とツイートしています。
連立政権の樹立が困難な今、与党連合の他党の重要性が増したことからか、フィリップ党首率いる小党オリゾンからベシュ氏を含み2名が閣僚に選ばれています。
アンジェ市で多数の木の伐採を容認
ベシュ氏は元共和党で政治経験は豊富ですが、エコロジーには「つい最近目覚めたのか?」と揶揄されています。
同氏が市長を務めるアンジェ市は「フランスで最も緑の多い町」に何度も選出されていますが、ベシュ氏の貢献度は皆無と言われています。
2014年には旧市街の商店支援と称して、駐車場の料金を最初の1時間無料にし、また来年完成する予定の路面電車の新路線建設にあたり、数百本の木が伐採されたことで市民や環境団体から非難されていました。
ボルヌ首相、明日国民議会で演説、信任投票はせず
明日6日(水)、ボルヌ首相は議会で政策全般に関する演説を行いますが、信任投票は求めないことを明らかにしています。
一方、極左「不服従のフランス」(France Insoumise)は、新内閣不信任案を提出すると発表していますが、極右、および共和党など保守政党の支持も必要になるため、可決の可能性は極めて低いとされています。
来週11日から18日にかけて、法案の提出、議論が行われ、新しい国民議会がようやく始動します。
執筆:マダム・カトウ