6月14日(火)、先日12日(日)に行われたフランス国民議会選挙の第一回投票で、マクロン大統領率いる与党アンサンブル!(Ensemble !)は25.75%で首位に立ったものの、極左の不服従のフランス党(France Insoumise)を中心とする左派連盟(Nupes)が25.66%と僅差で2位につけています。3位のマリーヌ・ルペン前党首率いる極右国民連合(Rassemblement national)も18.66%と大幅に得票を伸ばしています。19日に行われる決選投票で与党が過半数を取れるかどうかが注目されています。
与党と左派連合ほぼ同率も、過半数割れの可能性は低い?
フランスの議会選挙は小選挙区制で、第一回投票で過半数を獲得する候補者がいない場合、決選投票が行われます。
12日の投票ではほとんどの選挙区で決選投票が行われることになりました。
第一回投票の結果、および第2回投票の予想獲得議席数
与党アンサンブル!:25.75% 予想獲得議席数(255〜295席)
左派連盟(不服従のフランス党、社会党、エコロジー):25.66% (150〜190席)
極右国民連合:18.66% (20〜45席)
共和党:(Les Républicains )10.4%(中道と合わせて50〜80席)
極右R !(党首、エリック・ゼムール)4.2%
中道:(UDI)0.9%
1回目の投票で与党アンサンブル!と左派連合がほぼ同率の25%と、与党がわずか数万票の差でリードしているのみですが、統計会社イプソス社(Ipsos-Sopra Steria)が出した予想によると、決選投票後、577議席のうち与党が255席から295席を獲得する見込みとされています。
大統領選と違い、国民議会選挙は各選挙区ごとに候補者が選ばれます。確かに左派連盟は得票率だけで見ると与党と拮抗していますが、議席の獲得数を伸ばすにはより多くの選挙区で勝たなければなりません。
つまりより多くの有権者が支持した政党からその割合に見合った数の議員が国民議会に送り込まれるとは限らないわけです。そのため、第一回投票の得票率が高い左派連盟や極右国民連合の獲得する議席予想は、得票率に比べ低くなっています。
国民議会選挙、より多くの選挙区で「まんべんなく勝つ」
国民議会で議席を増やすには、より多くの選挙区で勝つことが最優先となります。
一部の選挙区で圧倒的な得票率を得て全体の得票率が高くなったとしても、別の選挙区で極端に低い得票率であれば、当選する候補者の合計数を増やすことは出来ません。
第一回投票で当選は5名のみ、うち4名が左派連盟
「左派連盟の支持層は大都市、大都市の郊外に集中している」と別の統計会社オピニオンウェイのブリュノ・ジャンバール(Bruno Jeanbart)氏がコメントしているように、パリ市の一部(11区、19区、20区)やセーヌ・サン・ドニ県モントロイユ市(Montreuil)では、同連盟の4人の候補者が50%以上の得票率(25%の投票率)で当選が確定しています。
一方、マクロン大統領のアンサンブル党からは、得票57%、ロワール地方のマイエンヌ(Mayenne)で当選したヤニック・ファヴェネック(Yannick Favennec)氏1名のみとなっています。
アンサンブル党は支持者がフランス全国に満遍なくおり、今回の第一回投票でも上位2名に入った候補者数が417人と左派連盟の380人を大きく上回っています。
「中道」のアンサンブル党、2回目投票に有利か?
左派連盟が国民議会で過半数を取るには、「自党の候補者の80%が当選する必要がある」と語るのは、グルノーブル政治学院で左派の研究を行うシモン・ペルジコ(Simon Persico)氏です。
氏によると、鍵を握るのは1回目投票で上位2名に選ばれなかった党の支持者の動向です。
各選挙区でこれらの党がどちらの支持者に投票するかの指示をどう出すかによって、上位2名のうちどちらが勝つか大きく変わってきます。
この点では「極左」が率いる左派連盟よりも「中道」のマクロン大統領率いるアンサンブル党は、妥協案として他党の支持者に受け入れやすいと見られています。
第一回投票で共和党に投票した人が「極左」候補の当選を嫌疑してアンサンブル党候補者に投票する可能性は高い、と統計会社イプソスのマチュー・ガイアール(Mathieu Gallard)部長は見ています。
投票率、過去最低の47%
左派連盟は19日の決選投票で、今年の大統領選で「不服従のフランス党」の党首、メランション(Jean-Luc Mélenchon)氏に投票した層が投票所に足を運ぶことを期待しています。
しかしながら、12日の棄権率は52,49%と投票への意欲は低く、マクロン大統領の当選を阻止しようとした大統領選のような熱気は感じられず、19日の投票率が大幅に増えるかどうかは疑問が残ります。
執筆:マダム・カトウ