フランス語でスムーズに会話をするための「会話術」を、どのように身につけていけばいいか考えていく「フランス語『会話術』」シリーズ。今回は「思っていることをすべて言おうとする、要点がまとまっていない」ことについてお話しします。
思っていることを全部伝えたいけど…
思っていることを正確に伝えたいという気持ちは、いたって自然なことですよね。特に学習初期の場合は「きちんと話さなければいけない」と思うあまり、頭の中にあることすべてを言葉にしようとしてしまいがちです。フランス語学習者ならだれでも経験があるのではないでしょうか。
これはこれで非常に大切なことです。しかしその反面、言いたいことの半分も言うことが出来ず、最終的には何を話したかったのかすらわからなくなり、着地点が見えなくなってしまいます。
伝えたい情報を厳選する
では、どうすればいいのでしょうか? 答えは単純です。考えていることの1割、もしくはもっと少ない情報だけを確実に伝えればいいのです。つまり言いたいことをすべて伝えるのではく「これだけは絶対に伝えなければいけない」という情報を厳選し、さらに自分の語学力で伝えられる情報量に置き換えるのです。
コンピュータなどでも、容量オーバーした情報は送受信できませんよね。そういう時はデータを圧縮したり、もしくはデータ量を減らします。私たちの頭の中でも同じことが起こっていると考えてください。処理能力を超えた情報量を必死で処理しようとすると、私たちの頭も回線がパンクしてしまうのです。コンピュータの動きが遅くなったり止まったりしてしまうのと同じように。
単純化する訓練が大事
そこで頭の中で思い描いていることを、できる限り単純化し、自分の語学力で伝えられる範囲で文章を組み立てる訓練をします。例えば…
「昨日、私が名古屋に住んでいた時凄くお世話になった優しい隣のおじさんとばったりあって、
大阪の〇〇市にあるレストランが凄く美味しいという情報をもらったので、
これから、昔からの友人とその旦那さんと一緒にそのレストランに行ってきます」
と言いたかったとします。その場合、この中で「本当に伝えたい情報はどれか」を考えます。話している相手によって情報の重要度は変わってきますが、例えば「名古屋時代にお世話になった優しいおじさん」の情報は、その会話で本当に必要でないなら、言わなければいいのです。
もっともっと単純にしてしまえば「これから美味しいというレストランに行ってきます」だけで済むかもしれません。そのあとで会話がはずんで「誰に教えてもらったの?」「誰と行くの?」と聞かれるかもしれませんよね。
自分の言葉でシンプルに!
私たちは子供のころ、単純な文章を組み合わせて喋っていました。難しい表現がわからない時は、自分の知っている言葉で状況を説明し、相手に伝えていました。もちろん、うまく伝わらなくて機嫌が悪くなったりしたこともあるでしょう。
すでに成長して日本語では複雑な表現を話せる私たちなら、なおのこと「言いたいことをすべて言えない」というフラストレーションがたまることでしょう。
しかし、この「まず自分の言葉でなんとか伝える」ということが会話術を習得するための重要な訓練の一つなのです。
思い描いていること・言おうと思っていることの単純化。その訓練を繰り返して、すべてを言おうとするのではなく「最も重要な情報を伝える」ことが自然とできるようになると、驚くほど身軽に会話ができるようになるはずです。
次回は、会話術を習得する上で最も私たちを悩ませる「日本語のニュアンスをそのまま伝えようとする、日本語と同じ感覚で話そうとする」について考えてみたいと思います。
⇒Daisukeのフランス語「会話術」6 気持ちをダイレクトに伝えよう
執筆 Daisuke