フランスの底力!再建されたノートルダム大聖堂をご紹介

2025.01.28

セーヌ川に浮かぶシテ島に鎮座するノートルダム大聖堂。言うまでもなくエッフェル塔やシャンゼリゼ、ルーブル美術館と並ぶパリの一大観光スポットです。2019年に大規模火災に見舞われたものの、再建工事が進み2024年12月に一般公開が再開されました。このパリのシンボルの再建には、フランスの底力がにじみ出ています。今回は再びよみがえったノートルダム大聖堂についてご紹介します。

 

歴史の生き証人でもある重要観光スポット

ノートルダム大聖堂は1163年に建設が始まり、14世紀半ばに完成したパリで一番大きな教会です。建築物としての魅力もさることながら、ナポレオンの戴冠式やヴィクトル=マリー・ユーゴー(Victor-Marie Hugo)の小説『ノートルダム・ド・パリ』(Notre-Dame de Paris)の舞台になったり、戦後のパリ解放を知らせる鐘を鳴らしたり、多数の国葬が営まれたり…とパリの歴史の生き証人でもあります。

フランスで最も訪問者数が多い観光地ともいわれ、火災前年の2018年には1400万人が訪れたそうです。京都の清水寺の参拝者数が年間500万人と聞くと、その数の多さが分かります。

 

再建されたノートルダム大聖堂

再建されたノートルダム大聖堂には、入口横にインフォメーションデスクやショップができ、2カ国語対応の案内があらゆるところに設置されていました。キャンドルを買うためのお布施もキャッシュレス対応になっていたりと、以前よりも観光がしやすくなりました。

また新しく作られた公式アプリで入場予約などができます。ただし予約は必須ではなく、早朝などであれば予約なしでも数分の待ち時間で入ることが可能です。

見事に復元された天井

中に入ってみると、尖塔とともに崩れ落ちた天井は火災前から長年の汚れで真っ黒でしたが、今回の復元作業で白くきれいに生まれ変わりました。

ノートルダム大聖堂は他の多くのキリスト教会と同様、上から見ると十字の形になっています。身廊と直角に交わる袖廊の端にある、13世紀の作というステンドグラスのバラ窓は、火災でも崩れることなく残りました。今回さらに清掃されて非常にクリアな光が差し込んでいました。

再建工事には、約250社の2000人以上の作業員が関わったとのこと。屋根職人、石工職人、彫刻家、最新技術を扱うIT技師など多くの分野の専門職人が動員され、建造当初の技術と材料を再現し、可能な限り火災前と同じ外観になるよう工事が進められたといいます。

なお工事は2026年まで続きます。祭壇後室の修復や一部破損したステンドグラスの設置に加え、地下駐車場が書店やカフェなどのあるプロムナードに改装される予定です。

 

火災に関する展示も

新しいノートルダム大聖堂には火災に関する展示もあり、消火にあたった消防士や修復士の写真のほか、火事で被害を受けた遺物などを見ることができます。その中で注目したいのが黒焦げになった風見鶏です。

これは身廊と袖廊の交差部分の上にあった尖塔の頂上を飾っていたもの。火災で崩れ落ちた後しばらく行方不明でしたが、がれきの中から発見されました。熱と落下の衝撃で痛んでいるものの、鶏の原型はとどめています。

尖塔の先に置かれていた風見鶏

これを修復して新しい尖塔の先に戻す案もありましたが、損傷が激しいため最終的には新しい黄金の風見鶏が取りつけられました。新しい風見鶏の中には、聖遺物とともに、大聖堂の再建に携わった人の名前が記された封書が収められているそうです。

 

モダンになった参拝者用の椅子

洗礼盤や説教台など、教会の備品も修復されたり新しく製作されたりしました。中でもひときわ目を引くのが参拝者用の新しい椅子です。教会でよく見るベンチ状の長椅子ではなく、オークの無垢材で仕上げられた明るい色調です。椅子には「ND」の刻印がされています。

背もたれは比較的低く設計されていて、信者が前の椅子の背もたれに肘を置いてお祈りができるようになっています。また、座面はわずかに後方に傾いており、通常の教会の椅子よりも快適に座ることができるとのことです。

教会の椅子はぐっとモダンなものになった

これはスペイン国境に近いランド地方のBastiat Sieges社という家族経営の工房がノートルダム寺院のためだけに設計・製造したもので、1500席分が納入されました。

 

宝物庫は有料

教会の南側にある宝物庫も公開されました。中には再開記念式典の際に司祭が着用した衣装や、司祭が扉を開く際に使った杖なども展示されています。

3部屋ほどしかない小さな空間ですが、入場料(通常料金:12ユーロ、割引価格:6ユーロ)がかかります。約2,000円という入場料は高くも思えますが、再建への貢献と考えると良いかもしれません。

2024年12月7日のノートルダム寺院再開の際に司祭が纏っていた衣装と扉を開けた杖

再建後のノートルダム大聖堂では5ユーロの入場料を徴収するという案もありました。最終的にはパリの大司教が、ノートルダムはパリの歴史の一部であり無料で共有する必要がある、と有料案を却下したそうです。

 

壮大な歴史に新たなエピソード

2019年の火災は、フランスの大切な歴史文化遺産に甚大なダメージを与えた事故であり、なかったに越したことはありません。ただ今回の再建作業では初めて解体された部分も多々あり、新発見も多くあったそうです。ノートルダム大聖堂は重要な観光資源でもあるゆえに、まとまった期間の閉鎖ができず学術的な研究が進まなかったともいわれます。

また再開記念式典には大統領や王族など世界のリーダーが集い、フランス政府にとってはまたとない外交の機会になったと評価されています。

火災は不運な事故ではあったものの、その壮大な歴史にまたひとつ伝説的なエピソードを付け加えたようにも思います。

執筆 Takashi

オンラインフランス語学校アンサンブルアンフランセは、プロの講師によるマンツーマンのスカイプレッスンが1回1500円~受講できます。いつでもどこでも手軽に受講できる利便性と生徒一人一人にカスタマイズされた質の高いレッスンが好評です。→フランス語無料スカイプ体験レッスンはこちら メールマガジンであなたのフランス語学習をサポートする情報をお届けします。フランス語メールレッスン

Classement