フランス人女性、カナダのケベック州で「仏語レベル不足」で永住権申請を却下される

2019.11.12

9日(土)、フランス人女性のエミリー・デュボワ(Émilie Dubois)さんが、カナダのフランス語圏であるケベック(Le Québec)州で申請していた永住権の取得を、フランス語の能力が不足しているという理由で却下されたと報じられ、注目を集めています。

 

フランス語が母語なのに「フランス語が不充分」の謎

フランス中東部のブルゴーニュ(Bourgogne)出身のデュボワさんは、フランス語を母語とする、れっきとしたフランス語話者です。

2012年よりケベック州のケベック市(Ville de Québec)に住んでいて、カナダで最も大きな大学の一つでフランス語を使用しているラヴァル大学(Université Laval)の博士課程に在籍し、細胞生物学および分子生物学に関する博士論文で博士号を取得しました。その後、ケベック州内で自身の会社を起業しています。

フランス語が不充分の通知

2018年12月、休暇を過ごしていたフランスからケベックに戻った際、デュボワさんのフランス語が永住権の取得には充分ではない、との通知を受け取ります。

そこには、「あなたは、学位論文や博士論文を含め、ケベックでの学習プログラムを完全にフランス語では修めていない」と記されていたということです。

博士論文に英語の記載が

デュボワさんが書いた細胞生物学および分子生物学に関する博士論文は、有名な科学誌に掲載され、全5章あり、そのうちの1章が英語で記載されていました。しかし、これが移民局に「フランス語の能力が充分ではない」と判断され、永住権の取得の却下に繋がりました。

「英語は、科学者がお互いにコミュニケーションをとり、知識を共有するために使用する言語だ」とデュボワさんは言い、今回の決定を「バカげている」と話しています。

残りの4章は全てフランス語で書き上げ、また論文発表の際には全てフランス語で発表するなど、明らかにフランス語の能力が不足しているとは言えない状況に、多くの批判の声が上がりました。

「この話が、より現実的な移民法の定義に役立つことを祈っています。ケベックが成長するためには、人間の目を必要とする案件が本当にたくさんあります。」とツイートする、デュボワさん。

 

カナダ国内で唯一、フランス語のみが公用語のケベック州

ケベック州は、カナダ国内で唯一フランス語だけが公用語として認められています。人口はカナダの州の中では2番目に多く、州で最も大きなモントリオール(Montreal/仏語発音ではモンレアル)市は、フランス語圏の都市としては、フランスのパリ、コンゴ民主共和国のキンシャサ(Kinshasa)に次いで、世界第3位です。

フランス語憲章

1763年に終了した七年戦争(しちねんせんそう)で結ばれた講和条約でイギリス領となるまでは、フランスの植民地だったケベック州ですが、英語を母語とする住民が8パーセント弱なのに対し、フランス語を母語とする住民はおよそ78パーセントに上ります。

ケベック州では、州内の公用語をフランス語のみと定めた、フランス語憲章(Charte de la langue française)という法律があります。主な内容は、
・立法、行政、司法の手続きはフランス語で行われること
・州政府直轄の義務教育は、フランス語系の学校で学ぶこと
・経済活動では、書類はフランス語で書かれること
・雇用主と従業員の会話、企業内での会話は全てフランス語で行われること
と定められています。

フランス語を厳格に守っていくことが大きな目的ですが、企業名のフランス語表記を義務付けるなど、あまりに厳格な内容が度々話題となっています。

有名なところでは、フライドチキンの大手チェーンのケンタッキーフライドチキンの略「KFC(仏語発音ではカーエフセー)」が「PFK(ペーエフカー/Poulet Frit Kentuckyの略)」に、コーヒーチェーン「STARBUCKS COFFEE」は「CAFÉ STARBUCKS」と表記されています。

冒頭にお伝えしたデュボワさんですが、この一件を知った移民局長が再審査をすることを求めたと報道され、デュボワさんの永住権取得への意思は一層かたくなっているとのことです。

執筆:Daisuke

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