仏で最も権威のある文学賞、ゴンクール賞の受賞者が決まる

2019.11.05

4日(月)、フランス語圏で最も権威のある文学賞、ゴンクール賞(Prix Goncourt)の受賞者が発表されました。受賞したのは、ジャン=ポール・デュボワ(Jean-Paul Dubois)氏の「Tous les hommes n’habitent pas le monde de la même façon(全ての男たちが同じように生きているわけではない)」です。

 

ゴンクール賞とは

ゴンクール賞は、フランスの作家、エドモン・ド・ゴンクール(Edmond de Goncourt/1822-1896)が、弟のジュール・ド・ゴンクール(Jules de Goncourt/1830-1870)と一緒に築いた財産を基に1902年に設立されたアカデミー・ゴンクール(Académie Goncourt)によって、毎年、その年の最も独創的な小説などに送られる、フランスやベルギーといったフランス語圏で最も権威のある文学賞です。

これまでの受賞作品

これまでの主な受賞作品は、1908年のフランシス・ド・ミオマンドル(Francis de Miomandre)の「水に描く(Écrit sur de l’eau…)」、1919年のマルセル・プルースト(Marcel Proust)の「花咲く乙女たちのかげに(À l’ombre des jeunes filles en fleurs)」、1966年のエドモンド・シャルル=ルー(Edmonde Charles-Roux)の「忘却のパレルモ(Oublier Palerme)」、1984年のマルグリット・デュラス(Marguerite Duras)の「愛人(ラマン)(L’Amant)」などがあり、受賞した作品はその年におけるフランス文学を代表する作品として、フランス国内外で読まれ、作者のその後の地位を決める重要な賞となっています。

受賞対象は

ゴンクール賞の受賞は、原則として一人の作家に対して一回のみで、基本的には若手の作家に贈られる、いわば若手作家の登竜門として捉えられていて、日本で言う芥川賞の様な位置づけでしたが、最近では、既に作家として成功を収めているような中堅の作家が受賞することもあります。

驚きの賞金額

ゴンクール賞のユニークなところは、その驚きの賞金の額です。日本の芥川賞、直木賞はそれぞれ賞金が100万円ですが、ゴンクール賞の賞金は、わずか10ユーロ(およそ1,210円/1ユーロ:121円計算)です。

ゴンクール賞が設立された頃の賞金の額は5,000フラン(現在のレートでおよそ92,300円/1フラン:18.5円計算)で、当時の1フランを現在の600円から1500円程度の価値とすると、300万円から750万円と、非常に高額でしたが、第一次世界大戦後にフランの価値が大幅に下落し、第二次世界大戦後の1959年には、1930年代半ばに比べて、1/40までフランの価値が下落し、アカデミー・ゴンクールの資産が崩壊しました。

その後、賞金は形骸化し、10ユーロの小切手のみが渡されるようになりましたが、この賞が、金額が目的ではなく、受賞することそのものが、高い名声を手に入れる象徴として、現在も10ユーロの賞金が渡されています。

 

最有力候補、受賞を逃す

今回、ゴンクール賞を受賞したのは、ジャン=ポール・デュボワの「Tous les hommes n’habitent pas le monde de la même façon(全ての男たちが同じように生きているわけではない)」です。

最終選考に名前の挙がった、アメリー・ノートン(Amélie Nothomb)氏、ジャン=リュック・コータレム(Jean-Luc Coatalem)氏、ジャン=ポール・デュボワ氏、オリヴィエ・ロラン(Olivier Rolin)氏の中で、今年のゴンクール賞の最有力候補であった、ノートンは残念ながら受賞を逃しました。

ノートン氏は現在最も有力なフランス語圏の作家

ノートン氏は、ベルギーの作家で、出生直後から5歳まで日本で暮らし、ベルギー帰国後に23歳で再来日して、日本の企業に勤務、その時に感じた本人にとって理不尽と思える経験をもとに書かれた「畏れ慄いて(おそれおののいて/Stupeur et tremblements)」は、フランスで大ヒットし、この年のアカデミー・フランセーズ賞(Grand prix du roman de l’Académie française)を受賞し、その後映画化もされています。

フランスで最も権威のある文学賞の賞金が10ユーロというのも驚きですが、それを伝統として受け継いでいるのも面白いですね。今年の受賞作がどんな内容なのか、気になります。

執筆:Daisuke

 

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