2025年7月1日(火)、週末から南仏を中心にフランスを襲う猛暑は、ごく一部の地域を除いて全国にひろがり、昨日、一部の地域では最高気温が40℃を超えています。教室内の気温が30℃を超える学校では、授業を午前のみに変更したり、本日休校にしています。
フランス全土の88%を覆う「熱のドーム」、パリの最高気温36℃
フランスだけでなくスペイン、イタリアなどのヨーロッパ各地を襲う今回の猛暑は、アフリカから北上する高気圧を、偏西風の「ジェット・ストリーム」が、そのうえにかぶさる形で抑え込んでいることに起因しています。
ジェット気流は、北極ジェットと亜熱帯ジェットの二種類あり、この二つが通常は一本で形成されます。ところが、近年上空で二本に分かれてできる「ダブル・ジェット」現象が頻繁に発生しています。
この構造になると、気流の中央の風が弱い領域で高気圧が停滞しやすくなり、雲も雨もない「熱のドーム」を形成し、猛暑となります。
夜間の気温20℃越えの熱帯夜
本日、フランス16県が猛暑警報の最高レベル「赤」に、68県が2段階目の「オレンジ」に指定されています。昨夜につづき、パリの最低気温は今晩も20℃~25℃と眠れない夜が続きます。
猛暑を免れた世界遺産、モン・サン=ミッシェル
今回の猛暑警報の対象外となったごく一部の地域は、ブルターニュ地方(Bretagne)最先端の都市、ブレスト(Brest)や世界遺産モン・サン=ミッシェル(Mont Saint Michel)のあるマンシュ県(Manche)、ベルギー国境付近の一部の地域に限られています。
学校校舎老朽化、教室内30℃越え、突然の休校に父兄は対応せまられ
エアコンがなく、建物の近代化が遅れている校舎が多く、校庭はコンクリートやアスファルトで舗装されてさらに暑いことが多いフランスの学校では、猛暑による休校が相次いでいます。
突然の休校に、父兄の反応は2つにわかれています。
共働きが当たり前のフランスでは、突然の休校で子供を家で預かる人がいないことから、会社を休んだり、祖父母に頼んだり、育児休暇中の友人に預かってもらったりなどで対応した人がほとんどですが、彼らの中には、先週からわかっていた猛暑、にもかかわらず休校の決定は前日と、政府や自治体の対応の遅れに不満の声もあがっています。
その一方で、子供が熱中症になるのを避けるなど、健康管理の観点から、休校を歓迎する声もあります。
「冬の寒さ」ばかりを想定した建物、猛暑対策への法整備も進まず
フランスの典型的なアパートは6階建てで、最上階に多く存在する「屋根裏部屋」の中の気温は、40℃~45℃にも上ります。パリでよく見かけるグレーの屋根は、亜鉛葺き、つまり熱を伝導する金属がほどこされています。
屋根裏部屋の窓は天井にあり、すこしでも多く光を取り入れる仕組みですが、遮熱は考慮されていません。
もともと「女中部屋」を改築してつくられた、これらのアパートには学生や低所得者が住んでいます。
今年1月より、断熱が不十分なアパートの賃貸は「禁止」だが
フランスの住居には「DPE 」(Diagnostic de Performance Énergétique)と呼ばれる「エネルギー性能診断」が義務付けられています。
DPEは性能に応じてAからGの7等級に分かれており、不動産売買や賃貸の際には(広告への記載含む)その提示が法律で義務化されています。
2025年から、最も評価の低いG等級の住居の賃貸が法律で禁止されています。
しかしながら、この法律は今年1月以降の契約から有効なため、それ以前の契約物件は対応していません。
また、アパートのオーナーも費用のかさむ断熱工事に消極的で、改装が進んでいないのが現状です。
住居の断熱工事への補助金は「保留」
昨年までの断熱工事への政府の補助金「マ・プリム・レノヴ」(”Ma Prime Rénov”)、も予算削減で今年は今のところ保留となっています。
専門家によると、同じ高さの建物ばかりが密集するパリのような都市は、風通しが悪く、猛暑対応には不向きな構造になっています。
ハンディファン、バカ売れ
即効性のある対策がないため、これまでは主にアジア人観光客が使っていたハンディファンや扇子、職場用の卓上ファンなどの売れ行きが急増し、在庫切れになる店も出ています。
執筆:マダム・カトウ