フランス語の新聞は、読解力や表現力をアップするのに最適の教材です。新聞はなかなか手ごわそうですが、タイトルを毎日チェックするだけでも勉強になりますよ。
今回は、フランス語新聞のタイトルを読みこなすコツを伝授します。
タイトルは最難関?!
「記事本文」よりも、手軽に読めそうな「タイトル」ですが、実はフランス語学習者にとっては少々ハードルが高いです。なぜなら、タイトルは、短い文字制限の中に記事の内容を凝縮するため、 慣用表現や省略などが多用されているからです。
タイトルの文章が初級の文法で学ぶような「主語+述語」の典型パターンに沿っていることは、残念ながらほとんどありません。
しかし、諦めるのはまだ早い!タイトルに使われることの多い表現を知っておけば、省略された部分などを補いながらタイトルを理解できるようになりますよ!
タイトルによく使われる表現方法と、理解のためのコツ
新聞記者の具体的にどのような工夫がなされているか、紹介します。新聞によってスタイルの違いもありますので、一例としてご参考になさってくださいね。
1動詞の省略:簡単な動詞の場合
タイトルではしばしば、文意から想像しやすい簡単な動詞が省略されます。このような場合には、文に含まれる名詞から省略された動詞を想像してみましょう。
例えばパリのニュース。
« À Paris, des bains-douches pour les femmes SDF » Le Figaro 2019年1月3日
(bain=お風呂、douche=シャワー、SDF=sans domicile fixe/ホームレス)
このタイトルをみると、主語 des bains-douchesの後、すぐに前置詞+名詞 pour les femmes SDFが続いています。名詞の意味を直訳するだけでは、「お風呂とシャワー」が「ホームレス女性のために」どうなったのか、分かりません。
では、ホームレス女性がおかれている環境を想像してみましょう。ホームレスの方々は、”日常的にはシャワーやお風呂に入ることができない”と連想できますね。普段はお風呂やシャワーに入れない方々に、ニュースに取り上げられる出来事があったとしたら・・・”お風呂やシャワーが提供されたのかな?”と想像できないでしょうか。
ここで、「シャワー」と「ホームレスの女性」の間に動詞「offrir(提供する)」の受動態「être+offert」を補ってみると、
« À Paris, des bains-douches sont offerts pour les femmes SDF » 「パリ、ホームレスの女性にシャワーが提供される」
となり、意味が通ります。ここでは複数形の主語 des bains-douches に過去分詞 offert を単複一致させた offerts という形を入れています。
タイトルが名詞ばかりで書かれている場合には、このように単語の意味とニュースになっている状況を関連付けて動詞を補ってみましょう!
2動詞の省略:受動態の場合
次の例はどうでしょうか?今度はもっと簡単です。
« Des «gilets jaunes» condamnés à la prison » Le Figaro 2018年12月25日
( gilets jaunes=「黄色いジャケット運動」=燃油税高騰に対するデモの活動家、condamner=有罪を言い渡す、prison=監獄・刑務所)
ここでは、主語 Des «gilets jaunes» の後すぐに、過去分詞 condamnés が続いています。過去分詞には様々な用法があり、その一つに「~された」「~られた」といった受身がありますね。
名詞と過去分詞の羅列は分かりにくいので、受動態 être+過去分詞の être を補って通常の文章に戻してみましょう!主語が複数形なので、sont を補います。
« Des «gilets jaunes» sont condamnés à la prison » 「『黄色ジャケット運動』の活動家、有罪判決を受ける」
書き換えてみると、デモ活動家が法的措置を受けた、という単純な文章だったことがわかります。
このように、受身の意味で用いられた過去分詞を見つけたら être を補って受動文として読み替えてみましょう。主語と述語の関係が明瞭になり、タイトルの意味を理解できますよ。
まとめ
タイトルに使われる表現技法として、動詞の省略を紹介しました。
タイトルは、記者が読者を惹きつけるための 「腕の見せどころ」 。様々な表現の工夫を味わいながら、読みこなせるようになりましょう。
執筆あお