「愛の国フランス」「フランス人は恋愛に自由」。映画や小説などから、このようなイメージを持っていませんか?
実際、ニュースで大統領や政治家の愛人報道が出ても、不倫をした人に対して社会的制裁にまで発展することが少ないフランス。今回は、現地で暮らすなかで気がついた、自由な恋愛観や多様なカップルのかたちをレポートします。
フランスでは不倫はどのように捉えられている?
不倫とは、一般的には既婚者が配偶者以外の人と交際関係にあることをいいます。日本語の「不倫」に該当するものとしては、adultèreという「不貞行為」や「不倫」という言葉がありますが、民法上の不倫の概念で、一般的にはあまり使われません。その代わり会話では、tromper という言葉を使います。
これは「騙す」「欺く」「裏切る」という意味がありますが、「浮気をする」という意味でも使われます。
A : Tu l’as quitté ?(彼と別れたの?)
B : Oui, il m’a trompée.(うん、彼に浮気されたの。)
当然ながら、裏切られた側が傷つくのは言うまでもありません。
しかし、このようなことが起きた場合は、パートナー同士の感情の変化や、信頼関係の問題として受け止められるのがフランス流です。個人の問題として捉えられるため、著名人の不倫が発覚した場合でも、週刊誌などで取り上げられるものの、そこまで騒ぎになることはありません。
夫婦が不倫をきっかけに離婚することになった場合、不倫はフランスの民法上でも明確な義務違反にあたるため、裁判で相手の非を追及したり慰謝料を争ったりすることは行われます。一方で社会的な捉え方としては、不倫そのものよりも「二人の愛情関係がすでに冷めていた結果」として客観的に受け止められる傾向があります。

フランス 多様なカップルのかたち
法律婚 mariage (マリアージュ)
フランスの結婚は、婚姻届を出して終わりではなく、必ず市役所で民事婚(mariage civil)を行います。
家族や友人が参列するなか、市長またはその代理人の前で誓いを立て、書類にサインをすると、法律上の夫婦として認められます。その際、結婚する2人がそれぞれ最低1名ずつ立会人(témoin 証人)を用意し、法的な書類にサインをしてもらう必要があるため、本人同士だけでお祝いをする気軽さはありません。
離婚の際は、手続きに時間と費用がかかることもありますが、世帯合算による税制面のメリットや相続など、法的に守られている部分もあります。
連帯市民協約 PACS (パックス)
成人したカップルが安定した共同生活を行う目的で1999年に作られた制度です。
2人で契約書を作成し、市役所で登録手続きを行うことができます(行政手数料そのものは無料)。資産などの分与を明確にしたい場合は、公証人に書類の作成と管理を有料で頼むこともできます。
所得税などの税制面では、法律婚と同じように世帯合算の対象となり、節税につながるケースもあります。
PACSを解消する場合、2人が合意していれば、最初に登録した市役所(または公証人)へ共同申告書を書留で郵送または窓口で手続きができます。一方の意思のみで解消する場合は、司法執行官(commissaire de justice)を通じて相手に解消通知を送付し、その写しを市役所に届け出る形をとります。
事実婚 union libre (ユニオン・リーブル)
自由な結びつきを意味するユニオン・リーブルは、行政への届出を一切行わず、一緒に暮らしている状態です。税制上の優遇などは適用されませんが、制度に縛られない事実婚を選ぶ人もフランスでは少なくありません。
事実婚で子どものいるカップルも多く、父親が子どもを1歳前に認知をしていれば、共同で親権を行使できます。親の婚姻関係にかかわらず、子どもには法律婚の場合と全く同じ養育義務や相続権が認められます。
フランス人が大切にしている自由な恋愛観とは?
「フランス人は恋愛に自由」のイメージ、実際のところはどうなのでしょうか。現地で暮らしていると、年齢や婚姻関係に縛られず、自分の感情に素直に恋を楽しむ人々の姿に出会います。
例えば、記事を執筆している2026年現在のフランス大統領であるエマニュエル・マクロン(Emanuel Macron)大統領は、高校時代の教師だったブリジット(Brigitte)夫人と24歳差の歳の差カップルです。
また、フランソワ・オランド(François Hollande)元大統領は、大統領就任当時のパートナーであるヴァレリー・トリエルヴェレール(Valérie Trierweiler)氏とは事実婚でしたが、事実婚のファーストレディとして大統領の公務に同行したことで、大きな話題となりました。オランド元大統領は、その後ヴァレリー氏と破局した後、女優のジュリー・ガイエ(Julie Gayet)氏と交際を続け、大統領退任後の2022年に法律上の結婚をしています。
フランスでは、好きな人と自分たちの意思で自由に関係を選択しているように感じますし、「他人の目」を気にしたり「家族」のために本当の感情を偽って一緒にいることが、自分にとってもパートナーにとっても不誠実であると考える人が多いようです。
フランス人の自由な恋愛観の根底には、自分自身の人生と感情に責任を持つという考え方があります。
別れの先にある未来こそが大切
両親がパートナー関係を解消する時、子どもはどういう風にとらえているのか?知り合いの高校生に聞いたことがあります。
「以前のように愛情のある関係を築けないなら、別れたほうがいいと思う。そのほうが幸せになれるなら受け入れるよ。別れても、家族であることには変わりないしね」
この高校生は、両親の別れに心の痛みはあるものの、親が自分らしく生きるための決断と、前向きに受け入れている印象を受けました。
まとめ
フランス人の恋愛観をのぞいてみると、互いの「個」を尊重する考え方や、多様なカップルのあり方が見えてきました。世間体や制度に縛られることなく、「自分自身の人生と感情に責任を持つ」という価値観を持つフランスの人たち。フランスの文化や考え方を知ることは、私たちの視野や生き方の選択肢を広げてくれるのではないでしょうか。
執筆 YUKO












