フランス 「医療援助による死」を認める法案が国民議会を通過 厳格な条件とは

2026.07.17

2026年7月17日(金)、フランス国民議会(Assemblée nationale:下院)は、4年越しの議論の末、終末医療に関する法案を承認しました。これにより厳格な条件のもとで、「医療介助による死」を受ける権利が認められることになります。この決議を受け、医療現場ではこの法案に対する意見が二分されています。法律は、下院を通過したのみで、まだ施行が決まったわけではありませんが、医療現場の反応なども含め、地元メディアが大きく取り上げています。

 

「死ぬ権利」、4年越しの激しい議論の末、国民議会で承認

フランス国民議会は終末医療に関する法案を、賛成291票、反対241票と僅差で可決。これにより医療介助を受けて死ぬことが「権利」として認められることになります。

今回の採決に先立ち、この法案は4年にわたって審議され、8,000件を超える修正案が提出されています。

法案成立に12年間尽力してきた中道派議員のオリヴィエ・ファロルニ(Olivier Falorni)氏は、地元メディアの取材に応じ、「議員人生において、新たな基本的人権に関する法案に投票することは、そう何度もあるわけではありません」と誇らしげに語っています。

安楽死、「医療介助による死」の厳格な条件とは?

今回採決された権利を行使するための条件は;

・フランス国籍であるか、もしくはフランスに恒常的に居住している者
・難病、不治の病にかかっており、しかも末期的症状であること
・耐え難い痛みに苦しんでいること
・患者本人が死にたいという意思表明ができること、その意思が最後まで変わらないこと

この条件により、昏睡状態(意識がない)患者やアルツハイマーといった認知症患者は除外されています。

手続きは?

患者が医療介助による死を希望した場合、患者側は:

・書面でその旨と希望の日を医師に申請

します。

申請を受けた医療機関側:

・複数の医療チーム―担当医、他の医師、必要に応じて看護師や専門職などが,患者の状態や法的要件を確認
・審査期間は15日間で決定
・さらに2日間で日程を確定

安楽死、当日どのように実行される?

当日、患者は医師と看護師同席のもと、自ら致死薬を投与します。患者が物理的に自分で投与することが不可能な場合、医師もしくは看護師に代行を依頼することができます。

一方、医師及び看護師は、個人の信念に基づき患者の介助の依頼を拒否する権利「良心条項」を行使することができます。

 

医療現場の反応、これまでの医療の在り方を根本的に覆す

患者の治療、回復、一日でも長く生きる、ことを前提としたこれまでの医療を覆す、この法案の採決に、医療現場では疑問の声が上がっています。

レンヌの総合病院(CHU de Rennes)で、末期患者の対症療法病棟責任者を務める医師、 ヴァンサン・モレル(Vincent Morel)教授は、2005年にできたレオネッティ法(loi Leonetti )が「意図的に死に至らさせないという、超えてはならないボーダーライン」、だと述べています。

「尊厳死」、レオネッティ法とは?

レオネッティ法は、安楽死を合法化することなく、医学的に意味のない延命措置を続けてはならないとした上で、緩和ケアの提供を義務付けています。また、終末期には、たとえ死期を早める結果となっても、十分な鎮痛治療を行うことが認められています。

モレル教授は、25年のキャリアの中で患者が「死にたい」と言われることは常にありましたが、彼らの希望はまず苦しみを緩和すること、その苦しみを受け止めてもらうこと、そして意味のない治療をやめることです。これらの希望を聞いてあげることで「死なせてくれ」という患者の要求の95%はおさまる、と述べています。

患者を「死なせてあげる」義務が発生?

ところが、この新しい法律ができることにより、医者は患者の「死にたい」という希望をかなえてあげる義務が発生します。当然、先述の「良心条項」を行使して拒否することができますが、その場合、実行してくれる他の医師を紹介しなければなりません。

モレル教授自身も「人の命を終わらせる」という、この新しい「権限」のようなものを行使することができるか、「まだ答えは見つかっていない」、と述べています。

安楽死という選択肢は、医療従事者にとって大きな難関で、法律が施行されることになれば、研修や精神的なフォローが必要になると述べています。

 

今後、合憲性をめぐり憲法評議会へ

国民議会での承認を受け、ルコルニュ首相は、法律の一部の規定について憲法上の解釈を明確にするため、憲法評議会に審査を求める考えをすでに示しています。

この法律が施行されるかはまだわかりません。今後の動向が気になるところです。

出典:France Info 、20minutes

執筆:マダム・カトウ

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