ペリグー、リモージュ、ロカマドゥール…フランス南西部周辺の隠れた観光の穴場

2026.07.22

リモージュ焼の絵付け工房

世界一の観光大国フランス。「大きな街はだいたい行った」という方も多いのではないでしょうか。そんな方におすすめしたいのがフランス南西部周辺の、大西洋岸ボルドー(Bordeaux)と中部クレルモン・フェラン(Clermont-Ferrand)に挟まれた地域です。華やかな観光地が多くないため、日本人の旅先候補にはあまり挙がりませんが、フランスの地方の素朴な姿が垣間見られる場所として近年フランス人の間ではポピュラーになってきています。今回はその中心都市ペリグー(Périgueux)をはじめ、周辺の魅力的な街をいくつかご紹介します。

 

美食の街、ペリグー(Périgueux)

ドルドーニュ県の県庁所在地であるペリグーは、世界三大珍味のフォアグラとトリュフの一大産地です。秋から冬にかけては黒トリュフの市が立ち、パリからも有名シェフが香り高いトリュフを買い付けにやってきます。日曜の青空市場では、やはりこの地方の特産品であるクルミやクルミ油、鴨のコンフィなどがずらりと並び、試食をしながらのんびり歩くだけでも十分楽しめます。

最近はフランスでもヘルシー志向が高まっていますが、鴨肉やチーズを大量に使った素朴で力強い料理もたまには悪くありません。日本人には少し重いかもしれませんが、パリの洗練された美食とはまたひと味違う、これはこれで飾り気のないフランス料理です。すぐ近くで生産されるボルドーの赤ワインが全体的に重めなのも、この地方のこってり気味の食文化と無関係ではないような気がします。

また、郊外にある世界遺産ヴェゼール渓谷(Vallée de la Vézère)には、洞窟壁画で有名なラスコー洞窟(Grotte de Lascaux)があります。旧石器時代にクロマニヨン人が描いたとされる壁画は、歴史の教科書などで写真を見た人も多いのではないでしょうか。

 

崖にへばりつくチーズの村、ロカマドゥール(Rocamadour)

もう一つ足を運びたいのが、ペリグーの南東に位置するロカマドゥール(Rocamadour)です。断崖絶壁にへばりつくように築かれた村で、フランスでも有名な絶景スポットです。

スペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela)への巡礼路の中継地としての歴史も長く、断崖に張り付いて建つ礼拝堂まで階段を登っていくと、村を見下ろす景色に思わず足がすくみます。夕暮れ時には村全体がオレンジ色に染まり、またひと味違った光景を見ることができます。

ここの名物はヤギのチーズです。小ぶりで濃厚な味わいのこのチーズはフランス全土で売られており、「ロカマドゥール」というと断崖の村よりも先にチーズを思い浮かべるフランス人の方が多いくらいです。このチーズはパリなどの大都市でも気軽に購入できるので、村まで行けない方はチーズだけでも試してみてはいかがでしょうか。

ロカマドゥール村全景

 

最高級磁器を生産するリモージュ(Limoges)

南西部ではなくフランス中部になりますが、ペリグーから少し北に足を延ばしたところに、最高級磁器の産地として世界的に有名なリモージュ(Limoges)があります。真っ白で薄く繊細な磁器「リモージュ焼」は、王侯貴族の時代からフランスの食卓文化を支えてきた伝統工芸品です。街には磁器工房や美術館が点在しており、工房見学では絵付けの繊細な筆使いを間近で見ることができます。

18世紀以来、リモージュの磁器は世界各地の宮廷や富裕層のもとへと渡っていきました。日本の骨董市場やアンティークショップでも、高値で取引されていることが少なくありません。

リモージュ焼の影に隠れてしまっていますが、この地には他に七宝焼(Émail、エマイユ)の伝統も根付いています。両方を見比べるのもおもしろいかもしれません。

リモージュの工房にて絵付けを待つ高級磁器

リモージュは高級ブランド牛のリムーザン牛(bœuf limousin)の産地としても有名です。高級和牛とは違って脂肪分が少ない赤身肉が中心で、牛にストレスを与えない放牧により環境負荷が低いことで注目されています。リムーザン牛は、肉本来の味わいと香りをできるだけ引き立たせるために、熟成させることが一般的なようです。ペリグーといい、リモージュといい、この地方は美食の宝庫であることがよく分かります。

ちなみに高級車のことを英語で「リムジン(Limousine)」と呼びますが、その語源はリモージュのあるリモーザン地方(Limousin)の羊飼いの伝統衣装であるフード付きマントであるという説が有力なようです。

20世紀初頭の高級車はオーナーが乗る後部座席にのみ屋根が付いていて、運転手は外に座る構造が一般的でした。その形が伝統衣装のマントの形に似ていたところから、この地方の名前を拝借したようです。リモージュはなんとも引き出しの多い町なのです。

 

旅の締めくくりに日本式旅館

田舎に突如出現するMaison Shizen

ペリグーの近郊リル(Lisle)に、少し変わった宿があります。フランス人女性が営む、日本式旅館「Maison Shizen」です。オーナーは以前東京で10年ほど暮らしていたそうで、日本のおもてなしの文化にすっかり魅了され、いつかフランスでも同じような体験を提供したいと考えるようになったとのこと。

外観はよくあるフランスの田舎の一軒家ですが、中に入ると日本から取り寄せた畳や襖、調度品が品良く並べられており、想像以上に「和」の空気が漂っています。同じく日本から取り寄せた浴衣を着て、現地の食材を使った和食をいただき、畳の上で布団で寝ると、日本にいるような錯覚を覚えるほど見事に空間が作り込まれていました。

ビジターのサインブックには日本好きなフランス人のメッセージが溢れています。ペリグー郊外のため、公共交通手段によるアクセスが難しい点がネックですが、オーナーご自身が日本の暮らしを愛し、細部にまでこだわって作り上げた空間には確かな説得力があります。

この土地ならではの美食や自然、職人の技を楽しんだあと、フランス人の心づくしの「和」のおもてなしにひと晩浸ってみる。そんな旅の締めくくりも、なかなか乙なものだと思います。

室内にいると日本の旅館そのもの

 

まとめ

ボルドー、クレルモン・フェラン、トゥールーズといった大都市の谷間のようなフランス南西部。産業・自然・歴史・食といった要素がほどよくミックスされており、個人的には観光地としての完成度は非常に高いと思います。

ペリグーまではパリからボルドー経由で電車で3時間半〜4時間、リモージュはパリから乗り換えなしで電車で約3時間半と意外に訪問しやすいのも魅力です。フランスの大きな街はだいたい行ってしまったという方は、次の目的地候補に加えてみてはいかがでしょうか。

執筆 Takashi

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