お菓子はもちろんのこと、ポタージュやシチューにコクを出すためにも用いられている生クリーム。酪農が盛んなフランスではチーズの種類が豊富というのは、みなさまも知るところだとは思いますが、実は生クリームもさまざまなものが生産されています。
日本だと脂肪分の違いで生クリームを選べるようになっていますが、フランスはそれだけではないのです。今回は、フランスの生クリーム事情についてお話しします。
料理用に種類が豊富な、クリームたち
日本の場合、スーパーには約35%と約45%程度の2種類の生クリームが売られていることが多いように思います。例えばホイップクリームを作る場合は35%以上の脂肪分があるとしっかりと角が立つため、日本ではお菓子作りに用いる人が多いかもしれません。
けれどもフランスの場合は、お菓子の他にもスープやグラタン、パスタのソースなど、お料理でも生クリームを使うことが多いため、専門店ではない普通のスーパーにも豊富な種類が置かれています。15%の低脂肪のものから40%以上の高濃度のものといった脂肪分の違いのほか、殺菌方法によっても生クリームの種類が分けられているのです。
ここからは用途別に、フランスの生クリームをご紹介します。
ホイップクリームに最適 “crème fleurette”
スーパーなどでも簡単に手に入り、私が一番日本の生クリームに近い使い心地だと感じるのが crème fleurette(クレーム・フルレット)です。生乳から作られ、加糖もされていないため、デザートやスープなどに使うことができます。また脂肪分も30%のものが売られていることが多いため、日本の35%のものよりも多少やわらかなテクスチャーに仕上がりますが、ホイップクリームとしても使うことができます。
ちなみに脂肪分の違いによる呼び方は ” entière(アンティエール)が全脂肪タイプ / légère(レジェール)が15%〜30%の低脂肪タイプ ” です。用途に合わせて脂肪分も確認してみてください。
乳本来の味わいを楽しみたいなら “crème crue”
冷蔵してもたったの7日ほどしか保存がきかないため、購入する場所が限られる生クリームです。けれどフランスならではの乳製品のおいしさを追求してみたいという方は crème crue(クレーム・クリュ)を買ってみてはいかがでしょうか。
加熱殺菌が行われていない生クリームで、乳本来の濃厚な味わいと、やわらかなミルクの風味を楽しむことができます。牧場で飲む牛乳を想像していただけると、おいしさがわかるかもしれません。チーズ屋さんやマルシェなどで見かけることがありますので、興味のある方はぜひ試してみてください。
常温保存できる?! 買い置きしたいなら “UHT滅菌クリーム”
フランスのスーパーを見ていると、常温の棚に牛乳や生クリームが並んでいるので驚いてしまいます。腐らないのだろうかと思わず心配になってしまいますが、こちらは『UHT殺菌クリーム』と呼ばれるもので、超高温瞬間加熱殺菌されているため、常温でも長期の保存が可能な加工がされています。
そのためスープやソースのために頻繁に生クリームを使う、という家庭にとってはとても便利。3パックほどのセットで売られていることが多いのですが、まとめ買いをしても家で常温保存をしておけます。
サワークリームのようにほのかな酸味 “crème épaisse”
私がこれは日本では見かけないなぁと思ったのが crème épaisse(クレーム・エペス)という種類の生クリームです。日本でも買えるような生クリームだとばかり思っていた私は、家に帰ってから思っていた味との違いに驚いてしまいました。まるでサワークリームのように、ほのかに酸味があるのです。
実はこの「crème épaisse」乳酸菌で発酵させた生クリームのため独特の酸味を持っています。épais/se(エペ/エペス)とは「濃い」や「厚い」という意味の形容詞で、濃厚で風味が強く酸味があることから付けられた名前だそう。
ヨーグルトのような爽やかな酸味のため、ドレッシングはもちろん、ローストした豚肉に添えたり、こってりとしたポタージュに添えてもおいしいです。
ノルマンディーの上質な乳製品を味わえる “crème d’Isigny”
最後にご紹介するのは crème d’Isigny(クレーム・ディズィニー)です。
Isigny(イズィニー)は、ノルマンディー地方にある街の名前。英仏海峡に面した位置にあり、上質な乳製品を生産することで知られています。ミネラルが豊富な草を食んで育った牛から取れる生乳は、乳製品に豊かな風味を与えるそうです。日本でも、北海道の「十勝」の名前が付けられた牛乳が売られていますよね。その「フランス版」といったところでしょうか。
生クリームの他にもチーズやバターなど crème d’Isignyとラベリングされたさまざまな乳製品が売られていますので、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
フランスの生クリームをご紹介しました。初めてフランスのスーパーで生クリームの種類の多さを目の当たりにした時は、どれを買えば良いのかわからずすっかり困り果ててしまいました。けれど今では「今度はこれを試してみよう」と、くじ引きでも引くような気持ちで種類もメーカー選びも楽しんでいます。フランスの乳製品は味わいが深く風味豊かです。日本でも輸入食品を扱うスーパーやデパ地下で見かけたら、ぜひ色々な種類の生クリームを試してみてください。
※日本では厚生労働省によって、脂肪分が18%以上のものを「生クリーム」と呼ぶ、と定義されています。同じように牛乳の脂肪分のみを分けた乳製品は、フランスではCrème(クレーム)と呼ばれています。こちらの記事では、脂肪分の濃さに関わらず、Crème全般を生クリームと表記してご紹介しています。