2024年12月13日(金)、就任後2ヵ月半で内閣不信任案可決で辞職したバルニエ首相の後任が本日昼に発表になり、最有力候補と言われた中道民主運動党(MoDem:Mouvement Démocrate,)党首で現在南西フランス、ポー(Pau)の市長、フランソワ・バイルー(François Bayrou)氏に決まりました。
民意を無視した?首相選び
今年の6月、マクロン大統領が下院、国民議会を解散し、異例の短期間で総選挙を行ったものの与党が大敗したため、過半数をとった政党が不在で、政治的混乱が続いていました。
最も得票の多かった極左不服従のフランス(La France insoumise)党率いる左派連合、新人民戦線(Nouveau Front populaire)から首相を任命せず、少数右派の共和党のバルニエ氏を任命したことで「民意を無視した」と議会は決裂しました。
バルニエ前首相が右派の意向が強く反映する来年度予算法案を強行採択したため、野党は左派連合に極右国民連合党(RN:Rassemblement National)も加わり内閣不信任案を提出、可決され、バルニエ内閣は総辞職しました。
極左、早速「不信任案を提出する」と発表、極右は様子見
バイル―首相の最初の任務は、なにはともあれ来年度予算を可決させることですが、そのためには就任直後、左派連合および極右国民連合党と話し合い、内閣不信任案を提出しないことを約束させることが急務です。一方野党は新内閣が確立した暁には、強行採択の不使用を要求すると発表していました。
しかしながら、新首相発表直後、マクロン大統領の辞任を強く主張する極左不服従のフランス党は「ベル―氏の任命なら内閣不信任案を提出する」と発表しており、今後も混乱が続くとみられます。
一方、極右国民連合党は、社会保険の予算カットや年金制度の改悪などの「政策次第」では不信任案を提出すると発表しています。
フランス国民の「ニュース嫌疑」が増加、政治疲れ
今年6月末のフランス内閣解散直前に行われた世論調査で、54%が「ニュースに疲れた」と回答し、39%が「とても疲れた」と回答しています。これは2022年からさらに1ポイント増えています。
26歳で会社の管理職に就くフロリアン(Florian)さんは、フランスの政治経済ニュースはもとより、どこかの国でテロが起こった、政権が変わったなど世界情勢や政治に非常に関心が高い人の一人でしたが、最近は、テレビの政治討論番組もラジオのニュースも聞くのをやめてしまいました。
一応FacebookやYouTubeでいくつかのページをフォローして、重要な出来事については最低限の情報をとってはいますが、以前のような大きな関心はなくなってしまいました。
ニュースを「シャットアウト」、今年の9月にさらに悪化
この調査を行ったObSoCo(Observatoire société et consommation)財団が今年9月に行った調査では、ニュースに「関心がある」と答えた人は全体の3分の1程度、「大変関心がある」と答えた人は10%と広がっていました。
代表グエナエル・ゴール(Guénaëlle Gault)氏によると、ニュース離れは単にライフスタイルの変化ではないようです。ニュースを聞いても自分にとって何一つプラスにならず、それどころか「ネガティヴな気分にさせられる」ため、次第にそこから距離を置くようになってしまったようです。
特に、政治討論会における意見の対立や「どちらの味方になるか?」といった選択を避け、自分が共感できそうな一部の政治家や情報をSNSでフォローする方向にシフトしています。
新首相は決まったものの、過半数なき国会による混乱、党派の争いは続くことが予想され、国民の政治離れはいよいよ加速しそうです。
執筆:マダム・カトウ