2024年12月6日(金)、フランス国民議会にてバルニエ首相は社会保険庁の来年度予算の強行採択を行使しましたが、左派連合(NFP:Nouveau Front populaire)および極右、国民連合党(RN:Rassemblement national)は内閣不信任案を提出、4日(火)の投票で可決されました。これにより、就任からわずか3か月のバルニエ首相および内閣は総辞職となりました。来年の予算が決まらない状態が続く中、今後どうなるのでしょうか?
前年度予算で徴税、公共サービス継続する特別法の適用
アメリカでは国会で予算案が可決しないと「シャットダウン」(公共サービス停止)になる、とよく聞きますが、フランスにはいくつかの救済策があるため、国が機能停止に陥ることはありません。
マクロン大統領が昨日行ったTV演説によると、その救済策の一つである特別法の適用が検討されているようです。
この特別法が予算決議の期限である19日までに議会に提出され可決すると、フランス政府は来年度も2024年の予算をそのまま適用することになります。ただし、新首相の任命及びその内閣成立後、2025年度予算が国民議会で審議され、新たに可決されれば新予算を適用することができます。
暫定予算で来年所得税が大幅に上がる?!
一見問題なさそうな特別法の適用ですが、一点、重大な欠点があります。
それは、所得税の計算にインフレ率を加味しないことです。
所得税の税率は5段階に分かれており、年収が増えて現在の課税枠上限を超えると一つ上の課税率が自動的に適用されます。
インフレにより給与ベースや年金が上がったことで、一つ上の課税率が適用され収入が激減する人がでるわけです。バルニエ首相の発表では、この影響を受ける人は1800万人に上ります。
非課税の人が課税に、38万人に影響
さらに、インフレ率の適用で上昇する生活保護や年金受給額の低い高齢者などの場合、非課税から課税対象に変わってしまいます。これにより約38万人が来年の所得税で課税されることになります。
なぜなら、来年度予算が可決されなければ今年のこの5段階の課税枠も据え置きになるからです。
たとえば、今年支払った2023年の所得枠では11,294ユーロ(約180万円/1ユーロ=約158円)まで非課税でしたが、今年受給した生活保護や年金がインフレ率で見直され収入が上昇してこの額を超えると一気に11%課税されます。
2024年の最低賃金は前年比で2%、年金は1.6%しか上昇していませんが、非課税枠ギリギリだった人たちは、インフレによる年収増以上に税金を払うことになるわけです。
このため、特別法案にインフレによる修正を加味した内容を加えて提出されるとみられています。
マクロン大統領、新首相で政治的混乱に終止符をうてるのか
野党から辞任圧力が強まる中「任期終了の最後の1秒まで現職を務める」と宣言したマクロン大統領は、今後新首相を指名しなくてはなりません。
右派保守のバルニエ首相は、今年の総選挙で最も得票の多かった左派連合に所属しないことから、そもそも首相に選ばれたことの正当性に疑問がもたれていました。
財政赤字の立て直しを最優先事項としていたわけですが、今後より中道、もしくは左派の首相が選ばれるのではないかという見方がされていますが、しばらく混乱は続きそうです。
執筆:マダム・カトウ