12月6日(火)、ウクライナ侵攻の影響でこの冬の電力逼迫が警戒される中、フランス政府は「最悪のシナリオ」であるブラックアウトを避けるため「計画停電」の可能性があることを発表しました。計画停電の対象になった場合の治安維持や救急、交通や学校の運営について、今後各県ごとに対策が検討されます。マクロン大統領は、最近のテレビインタビューで「そこまでフランスの電力は逼迫しているのか?」の質問に「あくまでも最悪の事態を想定して準備しているので、パニックにならないように」と答えています。
大寒波の到来、節電不十分でブラックアウト…最悪のシナリオ
「電気や暖房が切れた」「電話が不通になった」「街が真っ暗になって大混乱」という不測のブラックアウトを避けるため、政府は計画停電の準備をはじめています。
ブラックアウトになると街灯が消え、日照時間の最も短いこの時期のフランスでは1日の半分以上が真っ暗になってしまいます。
ボルヌ(Elisabeth Borne)首相は毎週緊急閣僚会議を行い、最悪の事態への準備を進めていますが、最大の懸念事項は「救急車、警察に電話が通じなくなる」ことです。
オリヴィエ・ヴェラン(Olivier Véran)政府報道官は、「フランスにある数社の電話会社のうちの一社の電波が通じれば、救急や消防、警察への電話は通じる」としていますが、アンテナが極端に少ない地方の過疎地では、通じなくなる可能性があります。
どうなる?計画停電対象になった地域、鉄道、地下鉄は不通?
もし万が一計画停電せざるを得なくなった場合、対象になった地域では列車が不通になる可能性大です。
走行途中で信号が止まると列車も停止するしかありませんが、駅以外の場所で停止した場合、降車できないため乗客が長時間車内に閉じ込められることになります。
地下鉄の場合も然りで、もちろん一部の区間だけ走らせることはできますが、万が一停車した場合に乗客が数時間も閉じ込められることになるのは避けるべきです。
真っ暗な学校での授業は無理
学校は少なくとも午前中閉鎖する方向性で、政府は教育省を交え検討しています。計画停電の時間帯は「朝8時から13時」もしくは「夕方18時〜20時」になります。
真冬のフランスでは日の出が遅いため、照明も暖房も、非常用のアラームもない教室で授業を行うことは、生徒にとっても教員や職員にとっても困難だからです。
計画停電、対象外の「保護地区」とは?
国民の60%は「計画停電」の対象になります。言い換えると、万が一非常事態となった場合でも、その例外とされる地域が40%もあるわけです。
それは、病院、警察、憲兵隊、消防署と、これらの建物と同じ送電網で繋がっている地域で、当然ながら周辺に住んでいる住民も恩恵に預かることができます。
ただ、「どの地域、どの地区の、どこからどこまでの電気の供給を断つという選別は非常に頭の痛い話で、答えが見つかるかどうかわからない」と関係者は話しています。
首都パリも「例外ではない」
首都といえども、非常事態になればイル=ド=フランス(Île-de-France)地域の一部として、極力電力逼迫に協力するため、そうなった場合どの地区、どの場所の電源を断つか検討されています。
自分の住所がブラックアウトの対象になるか?を確認
電力が逼迫しているかどうか、また逼迫している場合にどの地域がブラックアウトの対象になるかは、エコワット(Ecowatt)で確認することができます。
ここ数日の表示はグリーンになっていますが、電力が逼迫し始めるとオレンジになり、危機的になると赤になります。
計画節電の場合、毎日15時に「どの県が対象になるか?」、17時に「どの住所が対象になるか?」がわかります。
ブラックアウト23年の1月以降の可能性、「全てはお天気次第」ボルヌ首相
これまでメディアに注目されることもなかった、フランスの送電網を管理運営するRTE社(Réseau de Transport d’Électricité)は、「12月中のブラックアウトはない」と発表しています。
一方、ボルヌ首相は「ブラックアウトはとにかくお天気次第」と慎重な発言をし、特に寒さが増す1月以降を警戒しています。
一連のブラックアウト発言、節電アピールか?脅しか?
マクロン大統領の発言も含め、フランス政府は「ブラックアウト」をちらつかせ、節電に本気度が足りない国民を少々「脅して」、本当に徹底した節電が必要になった時に備えさせようとしているのではないかという意見も出ています。
政府は、セントラルヒーティングの最高気温の設定は「19度に」を強く推奨していますが、「守られていないアパートが多い」と発表されているなど、フランス国民の節電はまだまだ甘い?ようです。
執筆:マダム・カトウ