10月11日(火)、すでに開始から1週間が経過した製油所技師のストライキが長期化する中、フランス各地でガソリン不足が深刻になっています。組合側はインフレなどを理由に10%の大幅な賃上げを要求していますが、交渉は難航し本日もストが続行しています。
フランスの製油所の半分がスト、ガソリンスタンドに行列
ノルマンディー地方(Normandie)にあるトタルエナジーズ社(TotalEnergies)最大の製油所で始まったストは、7日にはエッソ=エクソンモビル社(Esso-ExxonMobil)の製油所2箇所にも飛び火し、現在フランスにある6つの製油所のうち半分の3箇所でストが行われています。
その影響で、現在フランスのガソリンスタンドの約30%でガソリンが全くないという事態に陥っています。
車がないと仕事に行けない人が多い地方の一部の自治体では、先週からすでに医療関係者への販売を優先するなどの措置をとったり、スクールバスの運転を見合わせているところもあります。
各方面に影響、ガソリンスタンド、自営業の収入減
通勤に車が必要な一般市民のみならず、運送業、引越し業社、修理工、タクシー運転手などガソリンなしでは営業できない職種に深刻な影響が出ています。ガソリンスタンドも開店と同時に在庫が売り切れ、その後供給がなければ営業できない状態に陥っています。
3日前、8日(土)の時点では、ガソリンが全くないガソリンスタンドは全体の約20%だったことから見ても、事態は日に日に悪化しています。
北フランス、パリ市内および近郊、ガソリンスタンド「空っぽ」
特に影響が大きいオ=ドゥ=フランス地方(Hauts-de-France)、および パリを含むイル=ド=フランス経済圏(Ile-de-France)では、その割合が50%に達しています。
パリ市内で10箇所のスタンドを回ったが給油できなかったというタクシードライバーは、自営業なので仕事をしないと収入がありません。何時間も並んだ末に「在庫がない」と言われ、クラクションを鳴らすドライバーなど利用者側の苛立ちも見られます。
パリ近郊の高速道路脇にあるガソリンスタンドでは、午前2時から車の行列ができています。一方、給油状況がわかるアプリを利用して、在庫のあるスタンドで給油できたという人もいます。
給油制限、ストック禁止、料金は値上がり
先週のスト開始直後にポリタンクでガソリンを買い溜めするドライバーが多数いましたが、不足が長期化し始めたことから、多くのスタンドではすでに一人あたりへの販売を30リットルに制限しています。
マクロン大統領は、会社側と組合側の両方に対し「国民への責任」を重く見て「ガソリンの供給を止める」という手段を使わずに交渉するよう要求しています。また、政府は本日、ポリタンク、携行缶へのストックを禁止すると発表しました。
不足からガソリンが1リットル当たり7セント(約10円/1ユーロ=約141円)、軽油が1セント(約1.4円)値上がりしています。
賃上げ要求の製油所技師、平均給与5,000ユーロは高いのか?
長引くストに企業側への非難の声が上がる中、トタルエナジーズは製油所の技師の平均給与を発表しました。
2022年の平均給与はボーナスを除いた場合、月額約4,300ユーロ(約606,000円)で、ボーナスを入れると月平均約5000ユーロ(約705,000円)になります。会社側はすでに昨年の業績をふまえた上で、今年の1月にフランスで3.5%のベースアップを行なっています。
また今年の3月には、フランス在住で自社のガスや電気を利用する社員に150ユーロの割引券を配り、7月には全社員に一人当たり200ユーロ(約28,200円)の「エネルギーボーナス」を支給しています。
トタルエナジーズ第一四半期利益106億ドル、組合は利益分配を要求
一方、トタルエナジーズの組合側(CGT:Confédération générale du travail)は、インフレにより低下した購買力を補うためとして7%を、さらに会社の好業績の配当分として3%、合計10%の昇給を要求しています。
理由として、同社が今年の第一四半期だけで実に106億ドル(1ドル=約145.75円/約1,545億円)もの利益を計上していることをあげています。
執筆:マダム・カトウ