5月11日(火)、今月3日からのロックダウンの段階的解除による行動制限の緩和で、5月のフランス国内旅行需要が一気に盛り上がっています。また、夏のバカンスの予約も昨年を上回る勢いで入っており、業界関係者からは安堵の声が上がっています。
フランス国内の予約40〜50%増、解除発表後に殺到
カステックス(Jean Castex)首相のロックダウン段階的解除の発表後、5月に3回ある連休に短期の国内旅行の予約が殺到しています。
フランス最大のアパート型ホテルチェーン、ピエール・エ・ヴァカンス・センターパーク(Pierre & Vacances-Center Parcs)社の5月の予約は、発表前の50%増、7月・8月の夏休みの予約は一気に40%増になっています。
世界最大の民泊プラットフォーム、エアビーアンドビー(Airbnb)も発表後、4日間、同社予約サイトへのアクセスが25%増えています。
確かに発表された数字はロックダウン中だった昨年同時期との比較によるもので、先の見通しが立っていなかった昨年との単純比較はできませんが、業界関係者は今年の夏はコロナ禍前の2019年と同レベル、もしくは、それを越えると予想しています。
クラブメッド、夏のバカンス売上昨年比で1000%
バカンス村を世界で展開するクラブメッド(ClubMed)は5月1日時点で、7月・8月のフランス人顧客のみの予約が前年比90%増、売り上げ全体が前年比1182%になっています。現在も予約がコロナ禍前以上の勢いで入ってきており「急がないと早急に満室になる」と発表しました。
フランスの中小規模ホテル及びレストランが加盟するLogis Hôtels(ロジスオテルズ)でも4月29日〜5月2日の予約が前年比75%増になり、その後も2019年と同じペースで予約が入ってきています。
小規模ホテルや民泊、レストランが加盟するGites de France(ジット・ドゥ・フランス)社のソランジュ・エスキュール(Solange Escure)氏は「今年のバカンスシーズンは2019年を上回る予想です。予約増はフランス国内全域にわたり、特に自然が豊かな田舎、“グリーンツーリズム”を優先する傾向が見られます。」と述べています。
《ポスト・コロナ》の旅は、観光名所に乏しい「ど田舎」
フランス人のバカンスで人気なのは相変わらず海岸沿い、ビーチリゾートですが、今年は例年以上に山や田舎が注目されています。クラブメッドによると、例年冬のスキーシーズンがメインの山岳部のバカンス村が、今年は夏の予約の4分の1を占めています。
ジット・ドゥ・フランス、エスキュール氏は「コロナ前に比べ、より田舎で観光名所があまりない地域に人が押し寄せる傾向があり」、特にフランス中南部のオーヴェルニュ地方(Auvergne)、リムーザン地方(Limousin)などでは予約が「5から10ポイント増えている」とコロナ禍後?のフランス人の旅行先の変化について説明しています。
ロジスオテルズの代表、カリム・ソレイユアヴ ープ(Karim Soleilhavoup)氏「フランス人はフランスを再発見しようとしている」と述べ、この新しい傾向を驚きと共に「大歓迎」しています。
《スローツーリズム》で滞在長め、電動自転車人気
「ポスト・コロナ」の旅行のもう一つの傾向として、1箇所への滞在が長めになっている事があげられます。ピエール・エ・ヴァカンス社によると、春夏のハイシーズンの平均滞在期間が1週間を超える割合が今年は44%となり、これはコロナ禍以前より3ポイント増えています。
滞在中のアクティビティーは、自然の中で散策、山歩きやサイクリングが人気で、特に近年の電動自転車普及も貢献しているようです。
この夏のバカンス、レンタカーが不足?!
宿泊と同じく、政府の発表後レンタカーの予約が急増しています。
レンタカー業界は、昨年3月から約二ヶ月続いた第一回目のロックダウン後、需要が前年比60%減と大幅に落ち込み、長引くコロナ禍で回復していませんでした。業界大手ハーツ(Hertz)社は米本社が経営破綻するなど窮地に追い込まれ、ヨーロッパカー(Europecar)社もこの1年で所有台数を36%を減らしています。
急な需要増で活気付く業界ですが、この需要増がどれだけ続くか予想し難いため、各社共、車の新規購入には慎重な姿勢を見せています。
また、自動車メーカーの生産台数減もレンタカーの台数増に悪影響を及ぼしています。
プジョー、フィアットなど大衆車を生産するステランティスグループ(Stellantis)は、半導体不足から今年上半期の生産台数を190万台減らしています。その為、個人向けより販売価格の安いレンタカー業界向けの販売に車を回さない可能性があると見られています。
こういった事情からレンタカー各社は今の所急な需要増に対応できておらず、すでに夏のバカンスの在庫が不足、その影響ですでに価格が上昇し始めています。
執筆:マダム・カトウ