「コーラス」「ハート」「授業」のうち、仲間はずれが1つあります。どれかわかりますか?答えは後ほど。
仮名書きの功罪
フランス語が上手く発音できずなかなか伝わらない、と悩んでいませんか?フランス語は、聞きとるのも発音するのも難しいですよね。習い始めの頃、仮名で読みを書きませんでしたか?スラスラ読めて覚えやすくなりますよね。残念なことに、この努力が発音の習得に悪影響を起こし得るんです。
でも音声学の知識を取り入れることで、この問題を解決できます!音声学とは、コミュニケーションに用いられる音声がどのように作られ伝わるのか、その音がどのようなものなのかを研究する学問です。
フランス語の発音はなぜ難しい?
そもそも、なぜ外国語の発音は難しいのでしょう?主な原因は、外国語の音が母語にないことにあります。大きく2つの難しさに分けられ、1つは調音(音を作ること)の難しさ、もう1つは音韻体系(音の並び方や、音を区別する機能など)の違いによる難しさです。フランス語には日本語にない音が多く、”V” や ”R” などの子音は意識して練習している方も多いでしょう。
でも母音にも注意が必要です。日本語が「ア、イ、ウ、エ、オ」の5個であるのに対し、フランス語は鼻母音を除いても12個もあります!
「コーラス」「ハート」「授業」はそれぞれフランス語で “chœur” “cœur” “cours” ですが、それをカタカナで書くと…どれも「クール」になるのではないでしょうか?実際には全て同じ発音ではありません。日本語に存在しない音は区別できないのです。そのため日本語話者は、フランス語を聞いたり話したりする際、カタカナの干渉を受け日本語の音のように認識、発音してしまう恐れがあります。
音声記号を活用しよう!
そこでお勧めしたいのが、音声学で使われる国際音声記号(フランス語:Alphabét phonétique international)です。国際音声学会という国際的な組織が定めているもので、あらゆる言語の音を表すために作られました。フランス語の12個の母音は次の記号で表されます。
「ア」に聞こえる音… [a][ɑ]
「イ」に聞こえる音… [i]
「ウ」に聞こえる音… [u][ø][œ][ə]
「エ」に聞こえる音… [ɛ][e]
「オ」に聞こえる音… [ɔ][o]
「ユ」に聞こえる音… [y]
これらの記号に見覚えがありませんか?実は、フランス語の辞書で見出し語のとなりにある、あの記号です!では先ほどの単語の母音を、音声記号で確認してみましょう。
chœur [œ]
cœur [œ]
cours [u]
“chœur” “cœur” の母音は œ で、”cours” は u です。どちらも日本語の「ウ」と違い口を丸めますが、œ は口の前のほう、u は奥のほうで発音します。そう、仲間はずれは「cours=授業」でした。なお、インターネットで国際音声記号を検索すると、記号の一覧を見ることができます。それぞれの音を聞くこともできるので、チェックしてみてください。
このように音声記号を活用してフランス語を勉強すると、日本語にない音を確認し、習得する助けになります。また、音声学の知識を深めると、正しい発音の仕方もわかります。
音声学のメリットは他にもたくさん!
まず、辞書を見るだけで発音がわかるようになります。記号が読めると、フランス語は日本語と違い、子音の後に必ずしも母音がないことに気づくでしょう。子音だけで発音できるとずいぶん日本語っぽさが抜けます。(子音だけの発音って?と思われた方、次回以降詳しくお話しします。)また、正しい発音を習得することでリスニング力もUPします。この機会に是非、音声学を取り入れて、カタカナ言葉を脱却しましょう!
執筆:Anne