義務教育の開始年齢3歳に引き下げ 批判はいまだに

2019.02.15

幼児と保護者
2月13日(水)から14日(木)にかけてフランスの国民議会(l’Assemblée nationale)では、義務教育(école obligatoire)の開始年齢を3歳に引き下げる法案の決議が行われました。

新法案は2018年3月27日にジャン=ミシェル・ブランケール国民教育・青少年大臣(Jean-Michel Blanquer, Ministre de l’Éducation nationale et de la Jeunesse)が発表したものです。

 

フランスの義務教育制度

現在のフランスにおける義務教育は、6歳から16歳までの10年間行われています。

この内訳は、以下の通りです。
・初等教育(L’enseignement primaire):日本の小学校にあたる(école élémentaire)5年間
・前期中等教育(L’enseignement secondaire Ⅰ):日本の中学校にあたる(コレージュ、collège)4年間
・後期中等教育(L’enseignement secondaire Ⅱ):日本の高校にあたる(リセ、lycée)3年間

フランスの就学前教育

日本の幼稚園にあたる就学前教育(école maternelle)は2~5歳児を対象としています。義務ではありませんが、教育は無償で行われています。

今回の法案では、就学前教育も義務教育に組み込もうとしています。幼稚園に通園する2歳児の割合は限られているものの、3歳児では98.9%に達しています(数値は前オランド政権が発表したもの)。

年齢引き下げの目的

就学前教育を義務化する必要性が唱えられているのは、言語的、また経済的な理由で幼稚園に通えない児童の学力が問題視されたためです。

特に海外県(départements et territoires d’outre-mer、通称DOM-TOM)や、移民系の児童が集中する地域における学力問題の懸念から、今回の法案が提出されました。

 

欧州では最長期間の義務教育に

現在、欧州各国の中に3歳から義務教育を開始している国はありません。北アイルランドでは4歳から義務教育開始が定められているので、現在はこの4歳が最低年齢となっています。

義務教育の開始年齢で最も多いのは6歳であり(例えばドイツ、デンマーク、イタリア、スイスなど)、フランスが今回の法案を施行すれば、欧州内では最も早い年齢で義務教育が開始されることになります。

法案への批判(1)自治体から

新法案は約2万6000人の児童に関係するとみられ、施行するために公立学校には年間800ユーロの費用がかかります。

以前から就学前教育に予算をつけている自治体からは、「予算を支出してこなかった自治体のみに法案を適用すべき」との批判もあがっています。

法案への批判(2)民間団体から

国家ライシテ活動団体(CNAL:Le Comité national d’action laïque)や教員労働組合「SE-Unsa」などの民間団体は、「就学前教育よりも私立中学校への支援を強化すべき」との意見を主張しています。

法案への批判(3)国家予算の観点から

法律の実施にあたり、ブランケール大臣は1億ユーロの財政支出を計上しています。自治体による教育費の総額はすでに60億ユーロにのぼりますが、自治体の支出が突然引き上げられることは予定されていません。

というのも、来年度の2019年9月に新たに義務教育の対象となる新入生2万6000人ですが、昨今の人口推移に伴い従来の制度で義務教育を開始する児童数は昨年に比べ6万人減少する見通しであるためです。

2019年度からの法律施行に向け、2021年度から国家予算に組み込まれる追加の教育費は、どのように捻出されるのでしょうか。

執筆あお

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