欧州28カ国で毎年実施されているサマータイム(夏時間=時間を1時間早める)ですが、欧州委員会(Commission européenne)は今年2月にサマータイム廃止に向かう案を決議し、この夏欧州市民にインターネットでアンケートを行っています。
フランスでは1976年に導入
1998年に欧州28カ国で足並みをそろえたサマータイムですが、フランスではいち早く1976年、ジスカール・デスタン大統領(Valéry Giscard d’Estaing)の時代に導入されました。
1976年といえば73年のオイルショックの3年後です。そもそもの動機は夏時間の導入による「電力の節約」、つまり「自然光にあわせて行動すれば、人口照明の使用時間が短縮され、省エネになる」、というものでした。
サマータイム=省エネは時代遅れ?
フランスのエコロジー・持続開発・エネルギー省(Ministère de l’Écologie, du Développement durable et de l’Énergie)によると、サマータイムの導入により、2009年に80万世帯で1年間で440ギガワット時の節電が行われ、少なくとも8万トンのCO2の排出が抑えられたとされています。
しかしながら、導入当時に比べ省エネ技術が飛躍的に進歩している現在、人工照明の省エネの90%はLED電球の導入によるもので、「サマータイムの導入が省エネになるという論理は過去のものだ」、と指摘する声も上がっています。
サマータイムの悪影響
夏時間や冬時間への変更直後の1週間は、交通事故の増加や不眠によるストレスの増加、農業や家畜への影響があるなど、毎年さまざまな報道がされます。とはいえ、特に健康への影響に関するデータは十分とはいえず、欧州委員会の発表は「影響がある」程度にとどめています。経済的には、年2回の時間変更は、特に貨物や運送業、交通などにかかわる企業に大きな負担をもたらしています。
欧州で足並みをそろえることが必須
サマータイム導入は、欧州内での交流、つまりコミュニケーションや交通をスムーズにすることが目的でルール化されました。
そもそも、加盟している28カ国はサマータイムを導入する義務はありません。ただ、導入する場合は、夏時間の変更は3月の最終日曜日、冬時間は10月の最終日曜日と、統一ルールに従う義務があります。
欧州委員会は今年の2月、フランスの欧州議員であり、欧州委員会の交通分科会長のカリマ・デリ(Karima Delli)に提議された「サマータイム廃止案」と、その影響をはかる「新たな調査」を賛成過半数で決議しました。
ただしこの案は、「廃止にあたっても欧州統一ルールに基づくことが適正である」と、欧州内で足並みをそろえることを示唆しています。既存の時差に加え、国によって夏時間と冬時間で時差が変わることは多くの不都合をもたらすため、欧州委員会も慎重にならざるを得ません。
北欧はサマータイム廃止派
北欧、特にフィンランドはサマータイム廃止に賛成しています。
反対派のほうがが多いフランスですが、それ以上にドイツやリトアニアは世論の大半が廃止派、イギリス国民はどちらかというとサマータイムを支持しています。
スペインはマヨルカ島などのべレアレス諸島は、EU外のトルコのように1年中サマータイムにしたがっていますが、スペイン政府は反対です。
サマータイムに賛成、反対には、各地の日照時間なども大きく影響しています。
あなたは賛成?反対?欧州市民にインターネットでアンケート
欧州議会はサマータイム廃止に関して欧州市民の声を直接吸い上げようと、7月にインターネットによるアンケートを開始しました。締め切りは8月16日です。
アンケートは賛成か反対かの理由を5つの観点から答えるものです。
- サマータイムにより電気の消費量が減ったか?
- サマータイムによる健康への影響
- 夕方以降の余暇の過ごし方
- 交通安全
- 国内経済への影響
また、3000字以内で自分の経験したことや意見を記入することもできます。
執筆:マダム・加藤