3月29日(日)に教会近くを通りかかった方は、緑の葉の枝を人々が手にしているのを見かけられたのではないでしょうか。写真は枝の主日のミサで祝別されたツゲの枝です。
今年の復活祭は 4月5日
3月29日は、そのちょうど一週間前となり、Rameaux(ラモー)、日本語で、枝の主日と呼ばれる日です。これは、イエズス・キリストが、イェルサレムに入るとき、人々がナツメヤシの葉を手に祝福して出迎えたという聖書の記述に拠るものです。それぞれの国で生えている植物を使うようですが、フランスではたいてい常緑樹のツゲを使うのが普通です。私は見たことがありませんが、フランスでも南部ではオリーヴや月桂樹の葉を使うそうです。
枝の主日のミサでは、持ち寄った枝を祝別してもらいます。その枝は、家に持ち帰り、壁に掛けた十字架に一年間飾るのが風習です。最後は燃やして、その灰を、翌年の灰の水曜日のミサで使うことになっています。
この枝の主日から、復活祭までの一週間を聖週間と呼びます。これは、四旬節(拙稿 二月の宗教行事と、二月の聖人ベルナデット参照)の最後の週で、復活祭の準備を最も入念に行う週でもあります。具体的には、イェルサレム入城、処刑、復活と続くイェズスの足跡を辿る一週間です。
*la Passion(キリストの受難)をあらわすJacques Du Broeucqの彫刻(1545-1546)
最後の晩餐
宗教上の行事はいろいろありますが、一般によく知られているのは、聖木曜日の「最後の晩餐」。多くの名画が残っていますから、たいていの方は聞いたことがあるでしょう。イエズスが、捕らえられる前に十二使徒とともにした最後の食事のことで、フランス語では、大文字で書いて Cène(セヌ)と言います。たいていこの聖木曜日は、夜ミサが行われます。
「最後の晩餐」の後、イェズスは捕らえられ、十字架を背負わされてゴルゴタの丘まで歩かされ処刑されます。この日から日曜までは喪に服す意味で、ミサもありませんし、教会の鐘も鳴らしません。
*Crusifixion(磔刑)1500年頃の作品
聖土曜日もミサは行いません。ただ、夜にはろうそくを灯し、日曜までそのともしびを絶やさぬよう務めます。なんだか、日本のお通夜に似ていますね。
そして復活
そうして迎える日曜日。イェズスが蘇ったことを祝うのが復活祭、フランス語のPâques(パック)です。復活祭は、毎年日にちが変わることもあってか、日本ではあまり知られていませんが、キリスト教徒にとっては、ある意味クリスマスよりも喜びの多い行事です。
*Résurrection(復活)
この時期に食べられる物
四旬節の間、節制していた卵などが、復活祭の象徴として飾りや料理に登場します。国や地方によっては、卵のたっぷり入ったお菓子を作ったりもします。フランスでは子羊の腿肉を食べる習慣があります。
またチョコレートも大手を振って口にできます。命の象徴でもある卵、それを産むメンドリ。その卵を運ぶといわれているウサギ、また聖木曜からの沈黙を破ってこの日鳴り響く鐘などをかたどったチョコレートが店頭に並びます。
昔は、復活祭の日からなんと一週間も祝日だったそうです。現在では、復活祭明けの月曜だけが祝日として残っています。
あとがき
ところで、Pâques(パック)の形容詞は、なんだかご存知ですか? それは、pascal(パスカル)。復活祭のミサのことを、messe pascale と呼んだりします。
Pascalは、人の名前としてもよく聞きます。男性ならPascal、女性はPascale。発音は同じです。1960-70年代生まれに大人気だった名前の一つで、私の知り合いにも数人います。『パンセ』を書いた思想家パスカルは、名前ではなく姓がパスカルでした。きっと、その祖先に、復活祭の頃、生まれた人がいたのかもしれませんね。
執筆:ゆき