2026年夏、パリでおすすめのアート展覧会7選<前編>

2026.07.28

Calder_Rever

Vue d’installation de l’exposition Calder. Rêver en équilibre, exposition présentée du 15 avril au 16 août 2026 à la Fondation Louis Vuitton, Paris.
© 2026 Calder Foundation, New York / ADAGP, Paris
© Fondation Louis Vuitton / David Bordes

 

例年以上に厳しい熱波が続くパリ。うだるような暑さの街を避けて、ひんやり涼しい美術館でアート鑑賞はいかがでしょうか。この記事では、アートな街・パリで開かれるたくさんの美術展の中からこの夏おすすめの展示を7つお届けします。

前編では日本人アーティストによる霧を使った作品が見られる展覧会や、ターナー賞受賞作家による個展など注目の3つの展示をお届けします!この記事を読んで、アートさんぽに出かけませんか?

 

光と霧の幻想的なインスタレーション

Fujiko Nakaya©️Fujiko Nakaya, #Cloud07156, 2026

アートコレクター、フランソワ・ピノー(François Pinault)による私設美術館「ブルス・ドゥ・コメルス(Bourse de Commerce)」では、8月24日(月)まで「クレール・オブスキュール(Clair-obscur)」展が開催中です。光と闇、可視と不可視、そのあわいに生まれる知覚や感覚をテーマに、絵画、写真、映像、インスタレーションなど多彩な作品を紹介しています。

会場となるブルス・ドゥ・コメルスは、18世紀に建てられた歴史的建造物。もともとは穀物の売買が行われる「穀物取引所(Halle aux blés)」として誕生し、19世紀にはコーヒーや砂糖、繊維など世界中の商品を扱う「商品取引所(Bourse de Commerce)」へと姿を変え、パリの商業を支えてきました。現在は日本人建築家・安藤忠雄の改修によって現代美術館として生まれ変わり、歴史的建築と現代建築が融合する人気スポットとなっています。

本展で注目されるのが、日本を代表する現代美術家・中谷芙二子による新作《Cloud #07156》です。人工の霧を使った「霧の彫刻(Fog Sculpture)」シリーズの最新作で、安藤忠雄が改修を手がけた円形空間を霧が包み込み、建築と自然現象が溶け合う幻想的な風景を生み出します。

霧は空気の流れや湿度、人の動きによって刻々と姿を変え、同じ景色は二度と現れません。建築を見え隠れさせながら、空間そのものを作品へと変える中谷のインスタレーションは、自然と人工、見えるものと見えないものの境界を静かに問いかけます。

キーワード:インスタレーション(Installation)
作品そのものだけでなく、空間全体を使って表現する現代アートの手法。光や音、映像、自然現象などを組み合わせ、鑑賞者がその場に入り込むことで完成する体験型の作品です。

展覧会概要

展覧会名:クレール・オブスキュール(Clair-obscur)
会場: ブルス・ドゥ・コメルス(Bourse de Commerce)
会期: 開催中〜8月24日※中谷芙二子の作品《Cloud #07156》は2026年9月14日(月)まで展示
料金: 一般 15ユーロ(約2,775円/1ユーロ=185円)
アクセス: 2 Rue de Viarmes, 75001 Paris
メトロ4号線 Les Halles駅、1・4・7・11・14号線 Châtelet駅などより徒歩すぐ

身近な素材から現代社会を問い直す、ジェシー・ダーリングの作品

Jesse-DarlingJesse Darling, Vanitas, 2024.   Vue d’exposition, Petit Palais, France (Paris).  Crédit photo : Grégory Copitet

セーヌ川沿いにある、ヨーロッパ最大級の現代アートセンター、パレ・ド・トーキョー(Palais de Tokyo)で開催されている「アンバサドゥール(Les Ambassadeurs)」展は、イギリスで最も権威ある現代美術賞のひとつ「ターナー賞」を2023年に受賞したアーティスト、ジェシー・ダーリング(Jesse Darling)による個展です。彫刻やインスタレーションを通して、身近な物や素材に隠された物語、そして現代社会の脆さを浮かび上がらせます。

ダーリングは、工業素材や使い古された道具、展示場所の周辺で集めた廃材などを組み合わせ、時間の経過による傷や劣化をあえて残した作品を制作しています。役割を失った物や忘れられた素材に新たな意味を与えることで、社会の中に潜む不安定さや、人間と物質との関係を問いかけます。

今回、パレ・ド・トーキョーの大空間「グランド・ヴェリエール(Grande Verrière)」のために制作された新作では、読めなくなった広告看板やポスター、風にはためく旗を掲げた演説台のようなオブジェが並ぶ、幻想的な風景を展開します。

本来、権力や社会的影響力の象徴である旗や演説台は、ダーリングの作品の中では意味を失い、揺らぐ存在として現れます。消費社会や生産システムによって生み出された物質の儚さを見つめながら、現実を詩的に再構成し、既存の価値観や権力構造を問い直す展覧会です。

キーワード:アッサンブラージュAssemblage
木片、金属、日用品、廃材など、異なる素材や既存の物を組み合わせて制作する表現方法。身近な物に新たな意味や物語を与える現代美術の技法です。

展覧会概要

展覧会名:アンバサドゥール(Les Ambassadeurs)
会場:パレ・ド・トーキョー(Palais de Tokyo)
会期: 開催中〜9月13日(日)
料金:13ユーロ(約2,405円/1ユーロ=約185円)
アクセス:13 avenue du Président Wilson, 75116 Paris
メトロ9号線 Iéna駅より徒歩5分

 

動きと均衡を追求した、モビールの生みの親カルダーの大規模展

Calder_Rever© 2026 Calder Foundation, New York / ADAGP, Paris
© Fondation Louis Vuitton / Marc Domage

フォンダシオン・ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton)で開催されている「カルダー  夢見る均衡(Calder. Rêver en équilibre)」展は、アメリカの彫刻家アレクサンダー・カルダー(Alexander Calder)の渡仏100周年を記念した大規模回顧展です。約300点の作品を通して、20世紀美術に革新をもたらしたカルダーの半世紀にわたる創作活動を紹介します。

カルダーは、風や重力によって動く彫刻・モビール(mobile)の生みの親として知られる20世紀を代表する彫刻家です。1920年代末に制作した「カルダー・サーカス」から、1960〜70年代に公共空間の芸術のあり方を変えた巨大彫刻まで、本展では彼が追求した動きや光、重力、音、素材、空間といった多様なテーマをたどります。

建築家フランク・ゲーリー(Frank Gehry)が設計した特徴的な建築空間の中で、ゆっくりと揺れ動くモビール。まるで振り付けられたダンスのように変化し、鑑賞者を作品の一部へと引き込みます。

彫刻だけでなく、絵画、素描、ワイヤーによる肖像作品、ジュエリーなど幅広い作品を通して、カルダーが生涯探求した均衡と動き、そして偶然性が生み出す詩的な世界を体験できる展覧会です。

キーワード:モビール(Mobile/モビル)
風や重力によって動く彫刻作品。アメリカの彫刻家アレクサンダー・カルダーが発展させ、静止した彫刻に動きや時間という要素を取り入れた表現として知られます。

展覧会情報

展覧会名:カルダー ― 夢見る均衡( Calder. Rêver en équilibre)
会場:フォンダシオン・ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton)
会期: 開催中〜8月16日
料金: 一般18ユーロ(約3,330円/1ユーロ=約185円)
アクセス:8 avenue du Mahatma Gandhi, 75116 Paris
メトロ1号線 Les Sablons駅より徒歩10分

 

後編もお楽しみに!

後編では、クロード・モネ(Claude Monet)の「睡蓮(Les Nymphéas)」で有名なオランジュリー美術館(Musée de l’Orangerie)や、昨年誕生したばかりの美術館、カルティエ現代美術財団(Fondation Cartier pour l’art contemporain)で開催される展覧会をご紹介します。ぜひお楽しみに!

執筆:hana

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