19日(土)、フランス南部のリゾート地、カンヌ(Cannes)で行われていた第71回カンヌ国際映画祭(通称:Festival de Cannes 2018)が最終日を迎え、最高賞であるパルム・ドール(Palme d’Or 金の棕櫚※)に日本人の是枝裕和監督作品の「万引き家族」(仏題:Une Affaire de famille)が選ばれました。※棕櫚:しゅろ ヤシの木の意
21年ぶりの快挙
カンヌ国際映画祭で日本人監督作品が最高賞のパルム・ドールを受賞するのは、1997年の第50回カンヌ国際映画祭で今村昌平監督が「うなぎ」で受賞して以来、実に21年ぶりです。
過去には、衣笠貞之助監督(1954年「地獄門」)、黒澤明監督(1980年「影武者」)、今村昌平監督(1983年「楢山節考」)が受賞していて、日本人監督作品としては5作目、日本人監督としては4人目のパルム・ドール受賞となります。
また是枝監督は2013年にも、コンペティション部門の審査員賞を受賞しています。
カンヌ映画祭上映翌日におこなわれたインタビュー(カンヌ国際映画祭公式動画)
是枝監督の作品
この他にも、「誰も知らない」は、2004年のカンヌ映画祭で主演の柳楽優弥さんが、最優秀主演男優賞を受賞しました。2009年には「空気人形」で、そして2016年には「海よりもまだ深く」で、同映画祭のある視点部門に出品されるなど、是枝監督は近年カンヌ映画祭で最も注目されている監督の一人です。
ドキュメンタリー番組の演出家をつとめていた是枝監督の映画作品は、社会的な問題を背景にしたものや家族のあり方を問うものが多く、静かでありながら観る人の心に深く印象付ける作風が特徴です。
万引き家族(Une Affaire de famille) どんな作品?
「万引き家族」公式予告動画
高層ビルの合間に取り残されたようにのこる古い平屋建ての家。そこに、祖母の年金を当てにした家族4人が住みつき、生活に必要なものは万引きをすることで賄っていました。ある日、団地で一人で凍えるように佇んでいた少女を家に連れて帰り、娘として一緒に生活しはじめます。ある事件をきっかけに、それまで犯罪を犯しつつも幸せに生活していた家族がひき離され、それぞれの秘密があきらかになっていく、というストーリーです。
家族のあり方について、常に問ってきた是枝監督が、家族にとって本当の「つながり」とは何かを問いかける作品です。
その他の受賞作品は?
第71回カンヌ国際映画祭のその他の受賞作品は以下の通りです。
長編映画部門
グランプリ(Grand Prix):『Blackkklansman(英題:Black Klansman)』スパイク・リー(Spike LEE)監督
審査員賞(Prix du Jury):『Capharnaum(原題)』ナディーン・ラバキ(Nadine LABAKI)監督
監督賞(Prix de la Mise en Scène):パヴェウ・パヴリコフスキ(Pawel Pawlikowski)監督 『Zimna Wojna(英題:Cold War)』
男優賞(Prix d’interprétation Masculine):マルチェロ・フォンテ(Marcello FONTE) 『Dogman』
女優賞(Prix d’interprétation Féminine):サマル・イェスリヤモワ(Samal YESLYAMOVA) 『Ayka』
脚本賞(Prix du Scénario ex-aequo):アリーチェ・ロルヴァケル(Alice Rohrwacher)『Lazzaro Felice』とヤファル・パナヒ(Jafar PANAHI)『Se Rokh』
カメラ・ドール(Caméra d’Or 新人監督賞):ルーカス・ドント(Lukas DHONT)監督『Girl』(ある視点部門)
特別賞(Palme d’Or Spéciale):『Le Livre d’Image(英題:Image Book)』ジャン・リュック・ゴダール(Jean-Luc GODARD)監督
短編映画部門
パルム・ドール(Palme d’Or):『All These Creatures』シャルル・ウィリアムズ( Charles WILLIAMS)監督
審査員特別賞(Mention Spéciale du Jury):『Yan Bian Shao Nian(英題:On the Border)』ウェイ・シュジュン(WEI Shujun)監督
カンヌ国際映画祭公式HPからも受賞作品の詳細をご覧いただけます。
カンヌ映画祭の最高賞「パルム・ドール」を受賞した是枝監督の「万引き家族」は、6月8日(金)より全国で公開されます。映画の詳細は万引き家族公式HPでご確認ください。
執筆:Daisuke