今回は日本語になったフランス語をご紹介します。同じ言葉でも日本とは意味が違う場合も多いです。褒め言葉のつもりが、相手にとっては「馬鹿にされた!」とトラブルの原因になることもあるので気をつけてくださいね。
日本語になったフランス語で多い用語
日本でフランス語を教えていた頃、教材制作のため、日本語に入っているフランス語の単語を集めたことがあります。予想に違わず、圧倒的に多かったのは次の4種の用語でした。
- プレタポルテ、オートクチュールなどの服飾関係用語
- エクレア、クロワッサン、ムースなどの製菓用語
- ポトフ、フォンドボーなどの料理用語
- ルージュ、オードトワレなどの化粧品用語
木靴 Sabotの深い意味
異色だったのがクーデタ、サボタージュ。これらの語が「日本語で通じるよ。」と言うと、大抵のフランス人は「困ったなぁ。」という顔をします。フランスのイメージがこれじゃぁなぁと、愛国心が刺激されるのでしょうか。
ところで、サボタージュといは、木靴=Sabot(サボ)に由来することをご存知でしょうか?日本ではオランダ土産として知られるあの木靴。フランスでは戦前まで労働者の履物として使われていました。
産業革命以後、経営者への抗議運動の際労働者たちが機械に木靴を投げ込み、故意に故障させたことから、動詞のsaboter(妨害する)や名詞のサボタージュが生まれたのです。
上に挙げた言葉は、基本的に、フランスでの意味そのままに日本で使われていますが、実は、日本語に入ったフランス語の中には、最初の意味と異なる意で使われているものも多くあります。
キュロット フランスではどんな意味
服飾関係だと、たとえばキュロット。キュロットは、19世紀初頭までは男性の履く半ズボンの意味で使われていました。その辺りは今の日本でいうキュロットとそれほどかけ離れたものではありません。
ですが、実は現代フランスでは、culotteというと女性や子供の下着を指します。これらはslip(スリップ)と呼ばれることもありますが、これまた日本語で使う「スリップ」とは全く指し示すものが異なることは皆さんもご存知ですよね。
フランス語で「ベスト」は上着?
そのほかベストと日本語で言うと、普通シャツの上に着る袖のない中衣を指しますが、フランス語では長袖のスーツの上着やジャケットのことです。
フランスでは「ナイーブ」の使い方に要注意
形容詞もなかなかの曲者です。ナイーブという日本語の形容詞は、どちらかと言うと”純情で繊細な心を持つ”という意味で日本では肯定的に使われることが多いようです。
ところが、フランス語のnaïf /naïveは、“馬鹿正直な”とか、“お人好しな”とか、むしろ否定的な意味で使われることのほうが多いのです。意図せず人の悪口になってしまわないように気を付けてくださいね。
フランスの「ソバージュ」は髪型ではない!
日本で80年代、緩やかなウェーブの髪型を表すのに使われたソバージュという言葉もフランス語の形容詞sauvageから来ています。
sauvageは、“野生の”という意味で動物などを形容して使われる一方で、景色や人についても使われます。
景色の場合は、“人の手の入っていない”、“荒涼とした”というニュアンス。人について使う場合は、“他人となかなか打ち解けない”とか、“よそ者を受け入れない”というニュアンスになります。
初めて保育園に入った幼児が、他の子と交わらず、一人ぼっちでいるのを好む時など、「あの子はsauvageだね。」という風に使ったりします。頭の中で“野生の”と変換しないように気を付けましょう。
最後に
外国語に入った言葉は、「似て非なるもの」を表すことがありますから、便利なようで厄介なものでもあります。使ってみる前に、意味やニュアンスを確認できればいいですね。
もしフランス人と話していて、「この言葉、この意味で使っていいのかな?」と迷ったら、「日本語ではこんな意味なんだけど・・・。」と、話題にしてみるのも良いでしょう。きっと、その場が盛り上がりますよ。
執筆:ゆき