
世界各地で起きている出来事を、一枚の写真から見つめてみませんか?
南仏の街・ペルピニャン(Perpignan)では、毎年夏の終わりから秋にかけて、国際的なフォトジャーナリズム・フェスティバル「ヴィザ・プール・リマージュ(Visa pour l’Image)」が開催されます。
歴史ある街ペルピニャンを舞台に開催
フランス南部、スペインとの国境に近いピレネー・オリアンタル県の県庁所在地ペルピニャン。カタルーニャ文化の影響を色濃く残す街で、フランスとスペイン、そして地中海の文化が交わる独特の雰囲気が魅力です。旧市街には、かつてマヨルカ王国の王宮として使われたマジョルカ王宮(Palais des Rois de Majorque)をはじめ、サン・ジャン・バティスト大聖堂(Cathédrale Saint-Jean-Baptiste)や、街のシンボルとして知られるカスティエ門(Le Castillet)など、歴史を感じさせる建造物が点在しています。
そんなペルピニャンの街を舞台に開催される「Visa pour l’Image」。期間中はミニム修道院(Couvent des Minimes)やドミニカン教会(Église des Dominicains)など、歴史ある建物が写真展の会場に。街を散策しながら、世界各地のフォトジャーナリズムに触れることができます。
世界の「いま」を伝える写真祭
© Étienne Montès
「Visa pour l’Image」は、世界各地のニュースや社会、文化、人々の暮らしなどを記録した写真を紹介する国際フォトジャーナリズム・フェスティバル。毎年、世界各地から多くの写真家やジャーナリストがペルピニャンに集まります。
2026年は8月29日(土)から9月13日(日)まで開催。市内の歴史的な建物などを会場に多様な展覧会が行われます。
展示されるのは、各国の社会情勢を記録した作品のほか、環境、移民、教育、テクノロジー、文化など幅広いテーマの写真。展覧会はすべて無料で、開催時間は毎日10時から20時まで。大きな会場にすべての展示が集まっているわけではないため、旧市街を散策しながら気になる展覧会をいくつか巡るのがおすすめです。
ペルピニャンまで行けない場合は、ウェブサイトでほとんどの展覧会をバーチャルに鑑賞することができます。
1989年から続く、世界有数のフォトジャーナリズム・フェスティバル
© Jérémy Lempin
「Visa pour l’Image」がスタートしたのは1989年。創設者はジャーナリストで写真界でも長く活動してきたジャン=フランソワ・ルロワ(Jean-François Leroy)です。
フェスティバルではニュースを伝える報道写真だけでなく、社会や文化、人々の暮らしなどを長期的に記録した作品も紹介してきました。
その背景にあるのは、写真を単なる記録やニュースの添え物としてではなく、世界で起きていることを伝えるジャーナリズムとしてとらえる考え方。これまで数多くのフォトジャーナリストの作品が紹介され、国際的な写真祭として知られるようになりました。
2026年は38回目の開催。そして写真誕生から200年という、写真の歴史にとっても特別な年です。そんな節目の年に、写真とジャーナリズムの関係にも改めて注目が集まります。
今年の見どころ① レイモン・ドゥパルドンの写真展が初開催
© Raymond Depardon / Magnum Photos
今年の注目展示のひとつが、フランスを代表する写真家レイモン・ドゥパルドン(Raymond Depardon)の展覧会「Reporter / Photographe」。映画監督としても活動するドゥパルドンは、写真通信社ガンマ(Gamma)の共同設立者のひとりでもあり、長年にわたってフランス国内外のニュースや社会を撮影してきました。
今回の展覧会は、これまでに撮影してきた報道写真を中心に彼の仕事を振り返ります。フランスを代表する写真家の仕事をまとめて見ることができる、とても貴重な機会です。
今年の見どころ② 日本の「バーチャル結婚」を写真で見る
© Jérôme Gence for Le Figaro Magazine
今回の展示のなかでも、少し変わったテーマで興味を引くのが、ジェローム・ジャンス(Jérôme Gence)による「Japon : les mariages virtuels」です。
テーマとなっているのは、日本で行われている架空のキャラクターとの象徴的な結婚。展示では、バーチャル歌手・初音ミクをイメージした人形と暮らし、彼女と結婚しているとする男性や、漫画のキャラクターとの結婚式を日本で挙げたフランス人女性などが紹介されます。
もちろん、こうした結婚に法律上の婚姻関係が生じるわけではありません。それでも、本人にとっては人生のなかで大切な意味を持つ関係です。日本の現代社会を外国人の視点から見つめることができる興味深い展示です。
今年の見どころ③ 写真で旅するインドと中国
© Michael Yamashita
フォトジャーナリズムというと戦争や政治などのテーマを想像しがちですが、今年のプログラムには異なる文化や人々の暮らしをじっくり眺められる展示もあります。
イタリア出身の写真家パオロ・ロヴェルシ(Paolo Roversi)による「インドの匂い(L’Odeur de l’Inde)」では、1990年代に撮影されたインドの写真を紹介。またマイケル・ヤマシタ(Michael Yamashita)の「東洋が西洋と出会う 中国40年の写真(L’Orient rencontre l’Occident ― 40 ans de photographie en Chine)」では、40年にわたって撮影された中国の風景や人々の姿を写真からたどることができます。
1990年代のインドの街や人々の姿を眺めたり、急速な経済発展を遂げた中国の変化を感じたり。写真を通して、まるでその場所を旅するような気分を味わえるのも、このフェスティバルの魅力です。
今年の見どころ④ 夜は屋外で写真上映
昼間の展示とあわせて楽しみたいのが、夜に行われる写真上映です。
ペルピニャンの歴史的建造物カンポ・サント(Campo Santo)では、8月31日(月)から9月5日(土)まで、毎晩21時30分から写真の上映が行われます。こちらも入場は無料です。
巨大スクリーンに映し出されるのは、この1年間に世界で起きた出来事を記録した写真。ニュースを振り返る「クロノロジー」から始まり、その後さまざまなテーマへと展開します。写真だけでなく、音やナレーションを組み合わせた演出も、屋外上映ならではの魅力です。
写真に詳しくなくても楽しめる
フォトジャーナリズムと聞くと、写真に詳しい人向けのイベントのように感じるかもしれません。でも「Visa pour l’Image」の魅力は、写真の専門知識がなくても楽しめること。世界で起きている出来事を知るきっかけとして写真を見るのはもちろん、単純に好きだと感じる作品を探すのもひとつの楽しみ方です。
期間中には、写真家による展示解説やトーク、ディベート、書籍のサイン会なども開催。実際に作品を撮影した写真家の話を聞くことができます。何より、展覧会は無料。すべてを見ようとせず、興味のある会場をいくつか選んで、ペルピニャンの街歩きと組み合わせて楽しめるのがうれしいところです。
パリからはどう行く?
ペルピニャンへのアクセスは鉄道が便利で、パリ(Paris)から高速鉄道TGV INOUIを利用して行くことができます。直通列車のほか、時間帯によっては乗り換えが必要な便もあります。例えばパリ発の場合、所要時間や費用はこのようなイメージです。
・出発駅: パリ・リヨン駅(Gare de Lyon)
・路線: 高速鉄道TGV INOUI ※一部便は乗り換えあり
・降車駅: ペルピニャン駅(Gare de Perpignan)
・所要時間: 約5時間~6時間30分
・料金:TGV INOUI 片道通常約50~100ユーロ(約9,250円~18,500円/1ユーロ=185円)
飛行機ならパリからペルピニャン=リヴザルト空港(Aéroport de Perpignan-Rivesaltes)へのアクセスもあります。空港から市街地までは比較的近く、ペルピニャン観光と組み合わせやすいのが特徴です。パリから少し足を延ばして、地中海に近い南仏へ。週末旅行の目的地として訪れるのもよさそうです。
© Lucas Bäuml / Frankfurter Allgemeine Zeitung
世界で起きていることを知るだけでなく、写真家が切り取った人々の暮らしや文化に触れることで、ニュースでは気づかなかった世界の一面が見えてくるかもしれません。写真誕生から200年という節目を迎える今年。ペルピニャンの歴史ある街並みを歩きながら、世界の「いま」を写真で巡ってみてはいかがでしょうか。
執筆:hana












