秋を迎える10月のパリでは、さまざまなジャンルの展覧会やアートイベントが開催されます。
前編ではジャンニ・ヴェルサーチの回顧展や、フランスの美術史を彩ったコレクターに焦点を当てた展覧会、現代アートやドローイングの展示など注目の4つをピックアップしました。
この後編では写真と現代アートを組み合わせた大型展から、タイ王室ゆかりの華やかな衣装、そして1903年から続く歴史あるアートイベントまで、前編とはまた違った4つをご紹介します。
写真でたどるピノー・コレクション「Remember Me」
Tyler Mitchell, An Embrace, 2024 © Tyler Mitchell
ブルス・ドゥ・コメルス ― ピノー・コレクション(Bourse de Commerce – Pinault Collection)で10月7日から始まる「リメンバー・ミー(Remember Me)」は、写真をテーマにした展覧会。2026年のブルス・ドゥ・コメルス開館5周年と、写真誕生200周年を記念する企画で、ピノー・コレクションの写真作品に焦点を当てます。
映像やテキスト、インスタレーションなど幅広い表現を手がけるアーティスト、バーバラ・クルーガー(Barbara Kruger)や、シュルレアリスム写真で知られる写真家・画家ドラ・マール(Dora Maar)、著名人のポートレートで知られる写真家アニー・リーボヴィッツ(Annie Leibovitz)など、多彩な作家の作品が紹介される予定です。特にバーバラ・クルーガーによるフランス最大規模のモニュメンタルなインスタレーションは見どころです。
フランス語キーワード:写真(la photographie)
フランス語で「写真」を意味する基本的な言葉。美術館やギャラリーの展覧会案内でもよく登場します。
展覧会概要
Remember Me
会場:Bourse de Commerce – Pinault Collection
時間:11:00~19:00(金曜は21:00まで)
住所:2 rue de Viarmes, 75001 Paris
期間:2026年10月7日~2027年1月18日
料金:大人15ユーロ(約2,700円/1ユーロ=180円)、学生など10ユーロ(約1,800円)
アクセス:Métro 1・7番線 Palais Royal – Musée du Louvre駅など
※オンライン予約推奨
パリ14区で出会う多彩なアート
パリ14区のダンフェール=ロシュロー(Denfert-Rochereau)地区には、旧ZARA店舗を利用した3フロアのアートスペースが登場します。
「150人展(L’Expo des 150)」は、2025年に13万人以上を集めたイベント。2026年は数百人のアーティストが参加し、絵画や彫刻などさまざまな作品を展示します。
さらに今回は、会場内に「ストリートアート・ダンフェール(StreetArt Denfert)」も登場。モンマルトルで長年活動し、近年はストリートアートにも力を入れているギャラリー・ルサール(Galerie Roussard)によるこのスペースでは、アーティストのコデックス・ウルバヌス(Codex Urbanus)が手がけた新刊書『パリとその郊外のストリートアート・ポケットアトラス(Petit Atlas de poche du Street Art de Paris et sa Banlieue)』に関する展示が行われます。
同書にはイル=ド=フランスで活動する200人のストリートアーティストが掲載されており、会場ではその作品を紹介。その多くのアーティストが来場し、作品について紹介したり書籍へのサインを行ったり、来場者と交流する予定です。
ひとつの会場にさまざまなアーティストの作品が集まるため、多彩な表現を一度に楽しめるのも魅力。無料で入場できるため、アートに詳しくない人も気軽に作品に触れられる機会になりそうです。
フランス語キーワード:ストリートアート(l’art urbain)
フランス語で「都市のアート」を意味する言葉。おもに街なかの壁などに描かれた絵のことで、もとは許可を得ない落書きでしたが、評価の高まりとともに都市アートとして合法的に制作されることが多くなりました。
展覧会概要
Expo des 150
会場:L’Expo des 150 et Street-Art Denfert
時間:11:00~19:00
住所:14 avenue du Général-Leclerc, 75014 Paris
期間:2026年10月3日~10月25日
料金:無料
アクセス:Métro 4・6番線、RER B線 Denfert-Rochereau駅など
※予約必須
タイ王室とフランス・オートクチュールの華麗な関係

De gauche à droite: Robe du soir — 1 960 Pierre Balmain (français, 1914-1982) Satin de soie brodé de fils métalliques et de cristaux Collection de Sa Majesté la Reine Sirikit
Robe du soir — 1960 Pierre Balmain (français, 1914-1982) Dentelle de coton, fils métalliques, fils de plastique, perles et sequins Collection de Sa Majesté la Reine Sirikit
Robe du soir — 1960 Pierre Balmain (français, 1914-1982) Satin de soie orné de fils de soie, de perles tressées, de paillettes et de broderies de métal doré Collection de Sa Majesté la Reine Sirikit
パリでファッションの歴史に触れたい人におすすめなのが、パリ装飾芸術美術館(Musée des Arts Décoratifs)で開催されている「威厳あるモード タイ王室におけるオートクチュールと伝統(La Mode en majesté. Haute couture et tradition à la cour de Thaïlande)」展です。
本展では、タイ王室の衣装やアクセサリーなど100点を超える貴重なアイテムを紹介。特に注目したいのが、シリキット前王妃とフランスのファッションデザイナー、ピエール・バルマン(Pierre Balmain)との長年にわたる交流です。
タイの伝統的な衣装文化をベースにしながら、バルマンをはじめとするフランスのファッションメゾンとの協働によって生まれた衣装を通して、タイとフランスの文化交流を知ることができます。刺繍や織物など、タイの豊かな手仕事にも注目です。
フランス語キーワード:テキスタイル(le textile)
衣服や布地などに使われる「織物・繊維」を意味する言葉。ファッションやインテリア、装飾芸術について語るときにもよく使われます。
展覧会概要
La Mode en majesté. Haute couture et tradition à la cour de Thaïlande
会場:Musée des Arts Décoratifs
時間:11:00~18:00(木曜は21:00まで)
閉館日:月
住所:107 rue de Rivoli, 75001 Paris
期間:2026年5月13日~11月1日
料金:大人15ユーロ(約2,700円)
アクセス:Métro 1番線 Tuileries駅など
※オンライン予約推奨。
1903年から続く伝統的なパリの秋のアートサロン
Le Salon d’Automne © Atelier 80 _ 2025
10月後半にパリを訪れるなら、歴史ある「サロン・ドートンヌ(Salon d’Automne)」にも注目したいところ。
1903年に創設されたこのアートサロンは若いアーティストの発表の場として始まり、印象派をはじめフォーヴィスムやキュビスムなど、時代を代表する芸術の流れとも関わってきました。現在では絵画、彫刻、写真、版画、ドローイングのほかアーティストブックやデジタルアートなど幅広いジャンルの作品が集まります。
2026年は123回目の開催。コンコルド広場に設けられる約4,000㎡の仮設パビリオンを舞台に、1,000点を超える作品が展示される予定です。
ひとつのジャンルに絞らず、さまざまな作品をまとめて楽しめるのがサロン・ドートンヌのおもしろさ。パリのアートシーンを幅広く見てみたい人は、ぜひチェックしてみてください。
フランス語キーワード:公募展・アートサロン(salon)
フランスでは、さまざまな分野の展示会やイベントを「salon」と呼びます。美術の分野でもアーティストが作品を発表する展覧会を「Salon」と呼ぶようになり、現在も「Salon d’Automne(秋のサロン)」などの名称にその伝統が受け継がれています。
展覧会概要
Salon d’Automne 2026
会場:Place de la Concorde
時間:11:00~20:00(金曜は21:00まで、日曜は18:00まで)
住所:Place de la Concorde, 75008 Paris
期間:2026年10月28日~11月1日
料金:大人16ユーロ(約2,880円)、学生など8ユーロ(約1,440円)
アクセス:Métro 1・8・12番線 Concorde駅など
10月のパリでは、大型美術館の企画展だけでなく、個性的なギャラリーやストリートアート、歴史あるアートサロンまで、さまざまな場所で作品に出会うことができます。
前編と後編で紹介した8つの展覧会も、ジャンルや会場はさまざま。気になる展示をいくつか組み合わせて、パリの街を歩きながらアートを楽しんでみてはいかがでしょうか。
執筆:hana












