フランスのプール事情、今回はその第二弾。「プールの雰囲気」をお伝えします。
分らないことは聞きましょう
海外でプールに行くと、日本のルールと違っていたり、書いてあることが分からなくて戸惑うことがあります。でも心配ありません。おしゃべり好きで、困ってる人を助けることが大好きなフランス人たちは、中でおろおろしていればほぼ必ず声をかけてくれます。
もし誰も声をかけてくれない場合は、勇気を出してどんどん聞きましょう。うまくフランス語が話せなくても、相手が「こちらが言いたいこと」をくみ取って答えてくれます。フランスで生活する上で最も大切なことは、「分かったつもりにならないこと」です。
プール入り口の様子
パリ郊外Chatou (シャトゥ)市のプール、Piscine municipale ‘Jean-François Henry’ の外観。
フランスのプールには例えばPiscine municipale ‘Lionel Terray’(僕の住むアントニー市のプール)やPiscine municipale ‘Iris’といったように、ほぼすべてのプールに名前がついています(une piscine municipale 市営プール)。
パリ1区(レアル les halles)にある Piscine Suzanne Berlioux の入口の様子。つい最近リニューアル工事が終わったばかりの、清潔な50mプールです。
どのプールの入口にも大抵このように営業時間、大まかな料金が表示されています。割引料金などもあるので、詳しくは窓口で確認しましょう。
入口にはこのように、プールに入るまでの手順が書いてあります。皆が楽しく安心して泳げるように、しっかりルールを守りましょう。シャワーの項目にはしっかりと「石鹸(シャンプー)を使って頭から足の先まで洗い流します」と書いてありますね。
レーンにより用途が違う
ここのプールは非常に大きく、プール幅20m、8クロワール(un couloir レーン)あり、その半分がLibre (自由に泳ぐ人用)として確保されています。
どこのプールでも、上級者、初心者そして自由に泳ぐ人が混在して事故が起きないように、細かくレーン分けされています。初心者や往復で泳ぎきることが出来ない人、水遊びをしたい人、楽しく自由に泳ぎたい人などはこのLibreを利用します。
そしてその他のクロワールもかなり細かく分けられています。
・battement/nageur débutant (バタ足・初心者用)
・brasse / nageur moyen (平泳ぎ・中級者用)
・crawl/dos crawlé/papillon(autorisé 14h00-18h00)/nageur confirmé(クロール・背泳ぎ・バタフライ(14時~18時の間のみ可)・上級者用)
・palmes/nageur confirmé (足ひれ・上級者用)
・4 nages/nageur confirmé/leçon (平泳ぎ・クロール・背泳ぎ・バタフライ・上級者・レッスン用)
プールによって違いはありますが、大抵は初級者と上級者、足ひれを利用する人はレーンが別になるように配慮されています。がっつり泳ぎたい人はnageur confirmé と書いているクロワールへ。ゆっくり自分のペースで泳ぎたい人はそれ以外で。自分にあったクロワールを選びましょう。
足ひれやシュノーケルも利用できる
すでに気づいた方もいるかもしれませんが、フランスでは公共のプールでもパルム(des palmes 足ひれ、フィン)やプラケット(des plaquettes 手ひれ)の利用が出来ます。またチューバ(un tuba シュノーケル)も利用できます。
注)プールによっては利用できない場合もあるので、各クロワールの注意書きやMNSに確認しましょう。
いろんな人と仲良くなれる
プールでの楽しみといえばもちろん気持ちよく泳ぐことですが、もう一つの楽しみは仲のいい人とのおしゃべりや、知らない人とのおしゃべり。
え?知らない人とおしゃべり? そうなんです。フランス人はちょっとでも気になることがあったり「この人と話してみたいな」と思えば、躊躇せず話しかけてきます。顔なじみになると随分昔からの知り合いのようにいろいろと話します。
「すみません、パピヨン(le papillon バタフライ)の泳ぎ方を教えてくれませんか?」
「今日はすごい人出だねえ。」
「そのゴーグル買ってみようと思ってるんだけど、ちょっと試させてもらってもいいですか?」
若い人からお爺ちゃんおばあちゃんにまで、とにかくよく話しかけられます。
僕からも「今日は水が冷たいですね」と全然知らない人に話しかけることもあります。なにげないたった一言ですが、話しかけられた人も(よっぽどその人の邪魔をしていない限りは)機嫌良く答えてくれるはず。「そうだね、でも泳ぐにはもってこいなんじゃないかな。ほら、早く君も泳いで体を温めなよ」と会話が弾むのです。
MNSとも親しくできる
MNSもとても気さくな人が多いです。たとえレッスンを受けていなくても、泳ぎ方に疑問がある場合に勇気を持って聞きにいけば、とても感じ良く教えてくれます。
そうやってMNSと親しくしておけば、ときどき彼らの方から「足の使い方をもう少しこうしたほうがいいよ」と教えてくれたり、レッスン用に使っているクロワールで泳がせてもらったりできるのです。
Piscine Susanne Berlioux の50mプール
人の多い時間帯は少し危険
そんなとてもサンパ(sympa 感じのよい)なフランスのプールですが、時間帯によっては雰囲気が一変することがあります。お昼休みと仕事が終わってすぐ(18h30~19h30)の時間帯です。
この時間帯は、昼休憩中や晩御飯までの少しの時間でも泳ぎたいという人が集中します。Libreのクロワールはそれほど変わりませんが、上級者向けのクロワールは数珠つなぎになって泳ぐことに…。
「1時間で何キロ泳ぐ」「1時間でこのメニューをこなす」としっかりと目標を決めてきている人が多く、前の人が遅ければ容赦なく抜かしていきます。
もちろんこの時間帯でなくても、前の人が遅ければ抜かして構いません。しかし混雑時には皆が前の人を抜かそうとしたり、行き帰りで同時に抜かそうとしたりします。そのため手や足がぶつかったり、時には頭がぶつかったり。ターン時に数人が巻き込まれる衝突が起こることがあります。
ケガには十分注意
混雑時のこのような状況で多くの人が殺気立ってくるので、言い合いになることもよくあります。こういう状態のクロワール内では、泳ぎ方がだんだん荒くなってくる人も多いので、ケガには注意が必要です。
手の衝突は想像以上に痛く、相手が腕時計やロッカーキーをつけている場合は出血をともなうことも。ケガをしてしまった場合は、すぐにMNSに報告して処置を受けましょう。
ぶつかった場合、普通ならお互いに謝罪したうえでケガがないか確認します。ですがこのような状況では誰とぶつかったかわからないことも多く、またごく稀にですがそのまま泳いで行ってしまう人もいます。
あまりに酷い場合はMNSが注意をしたり退出させたりもしますが、やはり自分の身は自分で守らなければなりません。混雑時には時間帯をずらすか別のクロワールを利用すれば、余計なストレスを感じずに楽しくフランスプールライフが楽しめるはずです。
どうでしたか? フランスのプールの雰囲気が少しでも伝わりましたでしょうか?次回はパリのバリアフリー事情についてお伝えします。
執筆 Daisuke