フランスでは、公共機関であるメトロ、バス、電車などの遅延が往々にして起こります。理由はストライキであったり、故障だったりさまざまです。では想定外の状況が起きたとき、フランス人はどのような対応をするのでしょうか?今回は、私が実際に電車に閉じ込められるハプニング体験を通して見えた、フランス人たちの驚きの行動についてレポートします。
雷の影響で電車が動かなくなるハプニング!
平日の夜8時、私はリヨンのパルデュー駅から出発した在来線に乗車していました。順調に運行をしていたものの、外はあいにくの天候不良。次第に雨が強くなりピカっと雷が光り、パキッと音を鳴らして電車は速度を緩め停車してしまったのです。車内は4割程度の乗客率で、友達グループ、家族連れ、私のように1人で乗っている乗客がいて、夏休みの平日の夜のわりには静かな印象でした。
30分ほどして車内アナウンスが入り「雷の影響で電車は停止しています。また情報が入ったら連絡します。」と伝えられました。予定より大幅に到着が遅れることを予測し、定時に目的地につけないことを悟って各自携帯電話で家族や友達に連絡をし始める乗客たち。彼らはパニックになることもなく、落ち着いて行動していました。車内は携帯電話の会話で賑やかな雰囲気に…。
電車が止まって2時間経過…車内の乗客は?
私はうとうとして眠ってしまい、目覚めると最初の車内アナウンスから2時間が経過していました。時刻は、夜11時過ぎ。電車はまだ動く気配がなく、車掌さんが、電気部分がショートしているため携帯電話の充電はできないことを知らせていました。
不安な心持ちで窓から外を見ると、真っ暗で相変わらず雨で何も見えません。小さいペットボトルを乗客が自由に飲めるように運ばれ、「この電車は、パルデュー駅に引き返す可能性があります。」というアナウンスが流れました。
車内の様子をうかがってみると、お母さんと小さい子ども2人のファミリーと女性客1人が話している声が聞こえてきました。どうやら駅を降りた後に行く方向が同じだったようで、ファミリーの車に女性客が便乗して一緒に帰る計画を立てていたようです。
電車の遅延に慣れているのでしょうか、他の乗客は眠っている人やおしゃべりをしている人など、みんな慌てている様子はなく、気長に待てる心の余裕があるのだなぁと感心。
5時間経ち真夜中に…乗客たちの意外な対応!
電車の修理係の人たちが車内を行ったり来たりしているものの、電車は止まったままで動く気配はまだありませんでした。私はまた車内の乗客の様子を観察し始めることに…。
すると、先ほどのファミリーが若者2人を引き入れて、カードゲームを楽しんでいる姿が見えました。小さい子どもたちはぬいぐるみを抱えて横ですやすやと眠っていましたが、修学旅行の車内のような楽しそうな雰囲気に私はびっくり。
また、私の後ろの席にいた若者2人組の1人が、中年の女性客のほうに席を移って話し込んでいました。この女性客は、仕事先の移転に伴う引っ越しのために電車に乗っていたようで、若者と話が盛り上がっている様子。若者のほうも連れの友達を放ったらかして、女性と楽しそうに会話していました。
それから電車はようやく動き出し、目的地に到着した時間は夜中の3時! 先ほどの若者と中年女性は「たくさん話ができてよかったよ!またね!」と挨拶のキスをして別れていました。
5時間の遅延でしたが、真夜中に駅に放り出されても誰も声を荒げることもなく、逆に車内で交流を図る余裕さえ見せたフランス人の対応に驚いた出来事でした。
寛容な心をもつフランスの人々
今回は雷という天候不良という理由もあったからでしょうか。5時間も遅延したのにもかかわらず、誰も車掌さんを責め立てるわけでもなく、終始落ち着いた雰囲気であったことは私も感心しました。さらに、電車が動き出したときは拍手まで起こったほどでした。車掌さんや修理係の人へのねぎらいと、やっと動いたという歓喜の表れだったのでしょう。
日本の素晴らしいサービスを知っている私は、こういったハプニングにはついイラっとしたり不安になったりしてしまいがちです。しかし、フランス人たちは突然トラブルが降り掛かった状況でも悲観的にとらえるのではなく、知らない人とトランプゲームをしたり、新たな出会いの場にしてしまうのです。楽観的なところがあるフランス人は、どんな状況でも臨機応変に対応し、楽しくやり過ごそうとすることが上手なのかもしれません。
まとめ
想定外のことが起きたときの対応の仕方は大切だと思います。フランス人は、一見マイナスに見えるようなことが起きても、そこから何とかいい方向へ向かうようにするテクニックを持っているように感じました。冷静に対応するという点では日本人も同じだと思いますが、そこから出会いの場にまで結びつけてしまうフランス人のコミュニケーション力は勉強になりますね。
執筆 YUKO