6月7日(火)、フランスはアメリカ航空宇宙局(NASA)の月面探査プログラム「アルテミス計画」に正式に加盟しました。2024年までに月面着陸などを予定している国際的なプロジェクトです。
NASAのアルテミス計画
「アルテミス(Artemis)計画」とは、NASAが主導する月面探査プログラムをいい、2024年までに人類を月面に送り、月に物資を運ぶなどの持続的な活動を目標としています。
この計画は、2020年10月にアメリカをはじめとする8カ国(カナダ、イタリア、ルクセンブルク、アラブ首長国連邦、イギリス、オーストラリア、日本)が署名した「アルテミス合意(les accords Artemis)」にもとづくものです。
この合意は1967年以降、アメリカがそれぞれの国と結んできた二国間協定の全体を指しています。
ワシントンで署名
今回、フランス国立宇宙研究センター(Centre national d’études spatiales, CNES)のフィリップ・バプティスト(Philippe Baptiste)氏は、米ワシントンにて上記のアルテミス合意に署名しました。
La France rejoint les « Accords #Artemis » ! Cette signature vient renforcer l’ambition commune de mettre en place des programmes d’exploration habités et robotiques et offre de nombreuses opportunités pour l’industrie et la recherche.https://t.co/aMh4R2N8GF
📸NASA/Keegan Barber pic.twitter.com/GXQqNtixiB— CNES (@CNES) June 8, 2022
加盟国は、月面で今後行われるさまざまな計画についての原則を遵守することになります。例えばミッションの透明性、システムの相互運用性、遭難時の人事的支援、科学的データの共有、歴史的遺産の保存などです。
この合意には、月以外にも、火星や小惑星での活動も含まれています。
国際法上での宇宙資源の活用
アルテミス合意への署名について、ひとつの争点となったのは、月にある水資源などの利用にかんする問題です。
現在100カ国以上が批准している1967年の宇宙条約では、第2条で「月その他の天体を含む宇宙空間は、国家による取得の対象とはならない」と定めています。
宇宙条約との整合性が問題
アルテミス合意では、宇宙資源の採取や利用を支援し、宇宙での活動を発展させることを強調しています。この合意は上記の宇宙条約を考慮したうえで起草されてはいるものの、条約との整合性が問われています。
CNESの担当者は、アルテミス合意が宇宙条約とは不整合ではなく、今回の署名によってフランスの月面探査への参画が強固なものになるとフランス通信社(AFP)に説明しています。
外交戦略
今回のフランスの加盟により、9カ国が米主導の宇宙開発計画のために結束したことになります。
一方でアルテミス合意には現在、中国やロシアなどは加盟しておらず、独自に月面基地を建設する計画を開発中です。外交戦略のいち分野として、今後も宇宙開発における国家間の協力関係に注目です。
執筆あお
外務省 宇宙条約 本文
NASA 国際宇宙探査の取り組み