フランス憲法に文法ミス 右派議員が修正を要求 7月10日からの憲法改正審議会で検討

2018.07.04

7月10日(火)から始まる憲法改正草案審議会に先駆けて、フランス共和国憲法(Constitution de la République française)の条文の中にある文法ミスを修正するよう、右派議員が要求しています。

 

どんなミス?

現在のフランス共和国憲法は、第五共和制に移行した1958年10月4日に制定された、第五共和制憲法とよばれる憲法です。その中の「共和国大統領」に関する条文が書かれている第2章の中の、「議会および憲法評議会の下での共和国の深刻な非常事態に対する大統領の権限」が書かれた第16条に、そのミスがあります。

Lorsque les institutions de la République, l’indépendance de la Nation, l’intégrité de son territoire ou l’exécution de ses engagements internationaux sont menacés…

共和国の体制、国家の独立、領土の保全、または国際協定の実行が脅威にさらされたとき…

という文章の中の「脅威にさらされた」という形容詞「menacés」が文法的に間違っていることが問題視されています。Les institutions / l’indépendance / l’intégrité / l’execution と女性名詞が続いているため、正しくは、男性複数形の menacés ではなく、女性複数形の menacées と表記しなければなりません。

フランスの憲法、法律を公開しているフランス政府公式サイト「Legifrance」内でも、

NOTA : (1) : Cet article fut originellement publié avec une faute d’orthographe. Le terme ” menacés ” devrait en effet s’écrire ” menacées “. (Legifranceより引用)

注:(1):この条文はスペルミスと共に発行されました。menacés という言葉は本来は menacées と書かれなければいけません

と訳注付きで紹介されています。

 

右派の超党派の議員が修正を強く要求

60年間も放置されたままだったこの「ミス」を、右派の政党、民主独立運動(Union des démocrates et indépendants UDI)を中心とした超党派の議員が、修正を強く要求しました。しかし、6月28日(木)にパリで行われた憲法評議会(Conseil constitutionnel)では、修正が見送られました。

これに対し、共同議長を務める民主運動(Mouvement Démocrate MoDem)のマルク・フェノー(Marc Fesneau)氏は、「賢明な提案だ」として、7月10日から始まる憲法改正草案審議会で再検討すると発表しました。

 

憲法改正審議会では「人種」という言葉が削除される見通し

6月27日(水)に国民議会で行われた審議では、憲法第1条の「人種」という言葉を削除し、新たに性差別を禁止する条文を追加する改正案が採択されました。

「主権」に関する条文が書かれている第1章の中の、「共和国の基本原則」が書かれている第1条にある

Elle assure l’égalité devant la loi de tous les citoyens sans distinction d’origine, de race ou de religion.

出生、人種または宗教による区別をすることなく、全ての市民が法の前に平等である。

という一節です。

この中の「人種」という意味の「race」に対し、国民議会の超党派の議員が「そもそも人種などというものは存在しない」と異議を申し立てました。この文言を削除し、代わりに「性別」を表す「sexe」を条文に盛り込み、「出生、性別または宗教による区別をすることなく、全ての市民が法の前に平等である」とすることで一致しました。

10日から始まる憲法改正草案審議会では、この修正案も審議される予定です。

執筆:Daisuke

オンラインフランス語学校アンサンブルアンフランセは、プロの講師によるマンツーマンのスカイプレッスンが1回1500円~受講できます。いつでもどこでも手軽に受講できる利便性と生徒一人一人にカスタマイズされた質の高いレッスンが好評です。→フランス語無料スカイプ体験レッスンはこちら メールマガジンであなたのフランス語学習をサポートする情報をお届けします。フランス語メールレッスン