2018年6月 ホメオパシー論争 大臣による問題提起で再び活発に

2018.06.04

homeopathie

日本でも度々その効果などが議論されているホメオパシー(英表記:Homeopathy、仏表記:Homéopathie)に対して、フランスでも議論が再び過熱してきました。

 

ホメオパシーとは

ホメオパシーとは、18世紀末から19世紀初頭にかけて、ドイツ人のザムエル・ハーネマン(Samuel Hahnemann)医師によって提唱された臨床医学観で、「健康な人に与えると、ある病気や症状に似た症状を引き起こす薬または物質を、その症状を持つ患者にごく微量に投与することで、体の抵抗力を引き出して症状を軽減する」とする代替療法の一種です。

フランスではオメオパティとよばれ、実に国民の70%以上がその効果を信用しているという統計もあり、フランスでは、日本の漢方薬の様に一般的な存在となっています。

 

何が問題なのか

ホメオパシーは、度々その効果について大きく議論が交わされますが、ホメオパシーの効果や理論については、現在までに医学的な研究結果から「プラセボ(偽薬)効果」以上の効果は認められない、とされています。

プラセボ効果とは、偽薬(小麦粉やブドウ糖など)を処方して、薬と信じて服用することによって、症状において何らかの改善がみられる効果のことを言います。

ホメオパシーは、その薬・物質の量を10の60乗という、非常に薄い濃度にまで希釈して使用するため、ほとんどその物質は残っておらず、薬学的な点においてプラセボ効果は期待できたとしても、それ以外は何もない、と言われています。また、ホメオパシーに代替することで、本来受けることができたはずの適切な医療を受ける機会が失われること、また本来の用途とは別の用途でホメオパシーを利用したことで引き起こされる事故、充分に希釈されていない高濃度のホメオパシーを服用することで生じる健康被害など、様々な問題が指摘されています。

 

ホメオパシーに対する保険適用の有無

多くの国では、ホメオパシーは保険適用から外されている傾向にありますが、現在フランスでは、ホメオパシーは最大30%まで保険が適用されています。

しかし、このホメオパシーのはっきりとしない効果について、議論が繰り返されています。効果のない・わからないものに対して保険を適用させるべきなのか、という意見や、使い方によっては深刻な健康被害を引き起こしかねないものに対して保険は適用されるべきではない、という意見も出ています。

また、2017年9月には欧州医学アカデミー(le Conseil scientifique des académies des sciences européennes :Easac) が、「ホメオパシーには科学的に立証された効果はなく、ホメオパシーを用いることで医師による診察が遅れたり適切な医療行為を妨げる恐れがあり、有害である」とのべ、保険会社にも保険を適用させないように勧めていました。

 

国立医学アカデミーがはっきりと否定

そんな中、5月18日(金)には、国立医学アカデミーがホメオパシーに対して、科学的・薬学的な治療根拠は認められない、と発表しました。これを受けて、22日(木)には、アニェス・ビュザン(Agnès Buzyn)保健相が「ホメオパシーの効果、それは多分プラセボ効果です。しかし害はありません。」と発表し、注目を集めました。

ビュザン大臣のインタビュー動画(BFMTV.)

ビュザン大臣は「ホメオパシーの問題は、これまで効果が証明されたことがない、ということです。」と説明しましたが、「ホメオパシーに対する保険適用は引き続き維持していくことが望ましいと思います。」と述べました。「プラセボ効果以上の効果はない」と認めながらも、「ホメオパシーの保険適用を打ち切ると、他のすべての効果の不確かな薬においても精査する必要がある」との見解をしめしました。

 

一方、いくつかのアルツハイマー薬は保険が打ち切られる

ホメオパシーの保険適用が引き続き継続される様子を見せた一方で、現在フランス国内で使用されている4つのアルツハイマーの治療薬(Aricept、Ebixa、Exelon、Reminylと関連するジェネリック医薬品)に対しては、保険適用が打ち切られることがわかりました。

これは、これらの薬は治療効果が不充分なうえに潜在的な危険をはらんでいる、との専門家からの指摘を受けての決定です。現在アルツハイマー治療薬には年間9000万ユーロ(日本円でおよそ118億円、1ユーロ:132円計算)の予算が組まれていて、15%まで保険が適用されます。

この決定にはフランス・アルツハイマー協会(L’association France Alzheimer)が「根拠がなく、危険な決定だ」と抗議しています。

これらの薬に対する保険適用の打ち切りは、早ければ8月1日以降になるとのことです。

執筆:Daisuke

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