モデル生活と拒食症を赤裸々に綴った本

2016.02.21

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元トップモデルの告発本:「私はハンガーだった」。もう一月ほど前になりますが、フランスで話題になった一冊の本をご紹介します。

 

 モード界に一石を投じる告発

en62-2頬はこけ、痛々しいまでに痩せた姿

著者はVictoire Maçon Dauxerre(ヴィクトワール・マソン・ドーセール)。
題名は『Jamais assez maigre : journal d’un top model』(出版社les Arènes, 272 pages, 18ユーロ)。意味は「いくら痩せても足りない」という感じでしょうか。

副題に「トップモデルの日記」とあるように、ヴィクトワールは数年前ニューヨーク・ファッションウィークに初登場して大きな人気をさらったファッションモデルです。続いてミラノ、パリのファッションウィークでもセリーヌ、アレキサンダー・マックイーン、ミュウミュウなどのブランドを身にまとい、引っ張りだことなりました。世界の人気モデルTOP20に入るまで、ほんの数カ月しかかかりませんでした。
この本には、スカウトから引退までの8カ月を記していますが、これを読んでモデルになりたいと思う人はまずいないでしょう。というのも、この本はいうなれば一種の「告発本」なのです。

ご存知ですか?モデルの服のサイズ

話が飛ぶようですが、フランスの服のサイズは大抵どのブティックでも最小サイズが36です。日本の7-9号に当たるサイズです。ちなみにフランス人女性に一番多いサイズは40(日本の11-13号)、次が42です。では、ファッションショーでモデルたちが着る服のサイズが何かご存知でしょうか。それはなんと、32か34なのです。言うまでもなくモデルたちは、みな長身。現に178cmのヴィクトワールがサイズ32に身体を入れ込むために、2カ月で落とした体重は11kgでした(58kg→47kg)。

身体と心、脳の働きも狂わせる拒食症

最初は一日3個のリンゴから始まった減量。その結果を維持するため更に激しさを増し、下剤や浣腸の使用、嘔吐が日課となっていきます。生理は停まって髪は抜け、町中で倒れるまで衰弱。果ては心も病み、人と関われなくなって最後は自殺未遂を起こします。華々しいデビューからわずか7カ月の出来事でした。

この本は無邪気な学生だったヴィクトワールが、スカウトを受ける時点から始まっています。愛情深い環境で育ったヴィクトワールが若く幼い部分もあるとはいえ聡明な観察力を持ち、きちんと周りに気配りもしながら未知のモード界に踏み出していく様子が分かりやすく記述されています。
モデルという職業についての描写も面白く、ページが進みました。しかし、聡明なヴィクトワールでさえストレスと栄養不足により次第に思考が歪んできます。そのあたり読むのが辛くなってくるのに、どうしても目が離せず一気に読んでしまいました。

 

フランスの新法律


en62-3子供新聞 L’actu にも紹介されました (No.4886, 1月19日号 8面)

フランスには、拒食症に悩む若者が3万から4万いるとされています。その多くはティーンエイジャーだといいます。モード界が世間に広める「痩せぎす=美」の図式の罪は大きいと考え、フランスでは去年12月17日にモデルの健康証明書を義務付ける法案が成立しました。(このあたりについては、こちらの記事に書いたので、よろしければお読みください)。
この法律を100%支持するヴィクトワールは、その遵守を広く呼びかけるために本の執筆を決心したといいます。この本はティーンエイジャーのヴィクトワールが、時間軸に沿って身の回りの出来事を数ページずつ綴っていくという構成になっています。

話し言葉に近いので大変読みやすく、フランス語中級者なら全く問題なく中級者未満であってもおそらくそれほど苦労せずに読めるのではないかと思います。読まずにはいられない勢いをもつ本でもあるので、興味のある方はぜひトライしてみてください。

 

まとめ

今では劇女優を目指すヴィクトワール。拒食症など摂食障害に立ち向かうべく、メッセージを発信しつづけています。テレビ出演の様子こちらのサイトなどからもご覧いただけます。

新法律を受け、今後モード界がどう変わっていくのかにも注目したいところです。

執筆:ゆき
執筆:ゆき

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