フランス非常事態宣言…テロを書くか、普段どおりのコラムか

2015.11.19

弔意を表す半旗弔意を表す半旗

 

同時テロ事件の発生後

多くの犠牲者を出した先週13日のパリ同時テロ事件には、みなさんもショックを受けたことと思います。

この連載は毎月だいたい1日、11日、21日の公開をめどに書いています。11月21日用の記事には、ちょうどその日にあたる音楽の守護聖人・聖セシルと、25日の独身女性の守護聖人・聖カトリーヌを取り上げるつもりにしていました。

13日にテロ事件が起き、私もtwitterなどで随時情報を流していましたが、思った以上に反響が大きくて人々の関心の高さを感じ、今回はやはりこのテロ事件について書くべきかと思いはじめました。

その反面、フランスでは「こんな時だからこそ(テロリストの脅しに屈しない姿勢を見せるためにも)普段通りの行動をしよう」という意思表示をする人も多く、それに倣って予定通り聖人の話を書くべきかと思う気持ちもあり、どうにも決められず…。

家宅捜索と銃撃戦

そんなこんなで悩んでいる最中のこと。今度は18日早朝から昼にかけて、テロ事件の首謀者と思われる人物を追って、パリ北部のサン・ドニで7時間に及ぶ激しい銃撃戦が繰り広げられました。日本のメディアでも大きく取り上げられたと思います。

実はその三日前からフランスでは毎晩のように各地で家宅捜索が行われ、たった三晩で合計414件の家宅捜索、60人の勾留、75の武器押収がなされています。

 

Etat d’urgenceとは

これらの強制家宅捜索が可能となったのは、テロ事件後すぐに宣言されたEtat d’urgenceのおかげでもあります。

「Etat d’urgence」は、直訳すると「緊急事態」。フランスでは「Etat d’exception(非常事態)」のひとつに数えられるものです。そのため私も当初はEtat d’urgenceを「緊急事態」と訳してきましたが、「緊急事態」が長く続くというのもなんだかおかしな表現なので、ここはやはり「非常事態」と訳した方が伝わりやすいかもしれません。

自由が制限される

この「非常事態」が市民の生活に及ぼす影響は、一言でいえばいくつかの自由が制限されるというものです。

例えば、
・場所によっては、自由な往来を制限される
・場所によっては、自由な滞在が禁止される
・デモ行進が禁止されることがある
・劇場やバー、カフェなど人が集まる場所の閉鎖を命じられることがある
・武器(猟銃など含む)を押収されることがある
・24時間家宅捜索が可能となる
・メディアの流す情報が制限されることがある
・映画や劇場の催しが検閲に掛けられることがある

というようなものです。普段は自由を制限されることをなによりも嫌うフランス人たちですが、これで安全が確保されてここ数日の家宅捜索のような成果を出せるのならと、今回の「非常事態」発令は前向きに受け止められているようです。

期間延長の可能性

en54-2国民議会

「非常事態」は、最長12日間とされており、延長には上院と下院の承諾が必要です。オランド大統領は当初より3か月に延長する意思を持っており、この原稿を書いている最中(11/19)に国民議会(下院)で可決されました。内訳は賛成551票、反対6票、棄権1票。圧倒的多数が支持しています。明日11月20日には、上院で延長の可否を問う投票が行われることになっています。

おそらく可決されると思われるこの「非常事態」の延長。功を奏してテロリスト組織摘発が速やかに進むことを期待します。

執筆:ゆき
執筆 ゆき

 

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